ヒレナシジャコ10年間未確認
最後の採取は宮古近海
絶滅か、市が情報提供呼び掛け
日本における現生種6種のシャコガイのうち、2010年12月に宮古島の近海で採取されて以降全く取れていない種類がヒレナシジャコだ。ほぼ絶滅に近い状態だが、生き残りが宮古や八重山などの近海にはまだ生存している可能性があるとして、市海業センターでは昨年11月からチラシを作製し、情報の提供を呼び掛けている。殻長は60センチに達し、国内現生種のうち最大の種。種苗生産が実現すれば食用や観光資源としても有効に活用できることから漁業者やダイバーなどに情報の提供を求めている。
同センターによると、ヒレナシジャコが最後に水揚げされたのは2010年12月に、佐良浜の漁師が宮古島近海の水深約25メートルで採取したもの。
当時もその個体を繁殖用に用いようとしたが、すでに弱っていて、繁殖できずに死んだという。
この最後のヒレナシジャコ採取については、本紙でも報道され掲載記事では、重さが約50キロで殻長約60センチとなっている。
現在、同センターでは種苗生産に向けてヒレナシジャコを4個体飼育中だが、この個体はすべて10年以上前に沖縄本島で県が同じ親貝から種苗生産したものだ。
市水産課の技師・島田剛さんは「遺伝的な問題から今いる個体を交配させることは望ましくなく、野生のヒレナシジャコを確保することが必要」と話した。
島田さんは、このチラシを関係機関に配布したほか、昨年は八重山漁協にも情報の提供を呼び掛けたが、最近の水揚げは皆無の状況で、2月現在も水揚げの連絡はないという。
ヒレナシジャコは、初期成長量が大きく、食用に活用する場合でも出荷に適した大きさになるのが早いことから、養殖する際にも有望という。
さらに、その大きさからマリンレジャーにおける観光資源としての価値も高く、東南アジアなどでは実際に観光客に見せる取り組みも行っているという。
その特徴は、貝の表面にヒレがなく、縁は滑らかで規則的な曲線。別種で同じ大型種のシャゴウは縁が不規則な曲線となっていることで見分けられるとしている。
島田さんによると、生息は沖縄が北限で、もともと数が少なかった可能性があるとしている。また、沖縄における生息環境は不明で、あまり目につかない深場(20~30メートル)に生き残りが生息している可能性があるとしている。
見つけた場合についても「禁漁期間(6月1日~8月31日)があり、取れる大きさ(30センチ以下は採捕禁止)の制限もある。さらに、漁業者か、漁業者の立ち会いの下でないと取れない。また、無理にはがしたり、水揚げすると個体が弱る場合もあるので見つけた場合はまず連絡してほしい」と訴えた。
天然の個体の買い取り価格は、大きさによって1万9000円~5万円。殻長が55センチを超えると5万円以上となっている。
連絡先は、同センター(72・5006)か市水産課(74・2212)。