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社会・全般
来間大橋開通25周年企画㊦
新しい「風土」で描く未来
移住者と共に伝統継承へ
来間大橋が開通して25年。この間の島の生活は島民が経験したことのない変化の中で過ごす年月となった。特にここ数年の動きは激しく、来間中学校が2014年に廃校。そして今月、来間小学校もその歴史に幕を閉じる。一方で、今年は島では初となる大規模なリゾートホテルが開業。突き付けられる少子高齢化と過疎化。そして一気に進むリゾート開発。その変化への対応が島民に求められている。
■ ギャップ
宮古島から来間大橋を渡り、島の入り口から続く坂道を上ると複数のおしゃれなカフェが道路沿いに並び、島に訪れた人たちを歓迎する。
そうした華やいだ雰囲気が第一印象になる来間島だが、島民からは「そういう印象になるかもしれないが、実際の島の状況は違う。ホテル建設やリゾート地としてもてはやされている一方で、少子高齢化、過疎化の最先端地域。跡継ぎがいない問題などもあり、島の暮らしと観光とのギャップは年々大きくなっている」と話す。
島に嫁いで20年になる砂川葉子さんは「大橋に対する感謝は島民すべて同じだと思う。しかし、橋が架かっても離島は離島。夢をかなえ、島の生活を楽にしてくれた橋ではあるが、それに伴う代償もある。橋にはいろいろな真実がある」と話した。
■ 財産
「もし、来間大橋が実現せず、25年の月日が流れたとしたら」の質問に、自治会の大浦邦夫会長は「のどかな島のままだと思うが、過疎化も少子高齢化ももっと深刻な状況になっていた可能性は高い。島民にとって橋は大切な財産でしかない」と、その重要性を強調した。
砂川さんも「橋がない生活なんてとても想像できないが、最近の変化は大きすぎる。島から学校が消え、リゾート化が急激に進むことへの不安はある。それとどう向き合うかが島人たちの役目だと思う」と話した。
■ 絆
旧暦9月の甲午の日に行われる来間島最大の伝統行事ヤーマスプナカ。最も島が活気にあふれる2日間は祭一色となって、島の発展と繁栄を願う。
生後1年未満の子供の誕生を祝って子孫繁栄を願うことから島民だけでなく、島出身者や島にルーツを持つ人たちが島外からも祭りに参加して盛り上がる。
この伝統行事が、もともといた住民と移住者たちの距離を縮め、絆を生んでいるという。
もともと住んでいた住民と移住者とではいろいろな面でギャップがあると指摘する大浦会長は「考え方の違いはあっても地域の伝統行事をお互いに協力しあいながら継承することはとても良いこと。それが互いの距離を近づけて絆も生まれる。伝統行事をしっかり継承し続ければ島に戻ってくる人も増えると思う」
砂川さんも「私たちも祭りや伝統に対する思いは強い。子供たちもその日は学校を休ませて地域のことを学ばせている。楽しみながら参加することが継承につながっていくと思う」と話した。
■ 風土
変化し続ける島の中で描く未来について、大浦自治会長は「この島の魅力は美しい自然。都会で疲れた人たちが癒やされる島になることが大切。そして、この島を愛する人たちが多く移り住めばさらに良くなると思う」と笑顔になる。
その島の風土は、島民がつくっていくものだと話す砂川さんは「地元の人が『土』だとすれば移住者は『風』みたいなもの。『風』と『土』で風土になる」と訴える。
その理由については、作物を育てる畑を耕すのは土に空気(風)を含ませて酸素を多くして作物が育つ環境をつくることで「風」と「土」の双方でつくるのが「風土」になるとしている。
大橋開通後の四半世紀は恩恵と課題への対応の歳月だった。その間に構築された現在の島の環境が新しい「風土」となっている。
直面する課題を克服し、移住者とともに伝統を継承しながら島を盛り上げる島の新しい「風土」こそ、さらに魅力ある島になるためのキーワードになっている
(垣花 尚)