「平和の誓い」守り続ける/沖縄全戦没者追悼式
戦後75年、玉城知事が平和宣言
【那覇支社】地上戦に巻き込まれた住民ら20万人余が犠牲となった悲惨な沖縄戦から75年目の「慰霊の日」となる23日、最後の激戦地となった糸満市摩文仁の平和祈念公園で沖縄全戦没者追悼式(主催・県、県議会)が行われた。新型コロナウイルスの影響で、式典は参列者を200人に絞るなど規模が縮小されたが、公園には花束を手に多くの県民らが訪れて戦没者の冥福を祈った。
平和宣言で、玉城知事は、同公園内に灯されている「平和の火」は、被爆地広島市の「平和の灯」と長崎市の「誓いの火」のほか、沖縄戦で米軍が最初に上陸した座間味村阿嘉島で採取した火を一つにしたものであると語った。
その上で「人類が二度と黒い雨や鉄の暴風雨を経験することが無いよう、心に平和の火をともし、尊い誓いを守り続ける決意を新たにする」と強調した。
さらに、沖縄方言と英語で「戦争の犠牲となった人々の魂の安らぎを祈り、これからの人類の未来に平和と喜びがあることを祈り続ける」と述べた。
米軍普天間飛行場の辺野古移設については、絶滅危惧種262種を含む5300種以上の生物が生息する大浦湾周辺など、陸と海が連環する沖縄の自然体系そのものがかけがえのない財産だとし、「自然豊かな海や森を次の世代、またその次の世代に残していくために、今を生きるわれわれ世代が未来を見据え、責任を持って考えることが重要だ」と断念を訴えた。
今年の「平和の詩」は、県立首里高校3年の髙良朱香音さんが、自作の「あなたがあの時」を朗読。「あなたがあの時、勇気を振り絞って語ってくれたおかげで、私たちは知った。永遠に解かれることのない戦争の呪いを、決して失われてはいけない平和の尊さを。真っ暗闇のあの中で、あなたが見つめた希望の光、私は消さない、消させない」などと力強く訴えた。
新型コロナウイルスの感染拡大を防止するため、安倍晋三首相、松井一實広島市長、田上富久長崎市長、中満泉国連事務次長・軍縮担当上級代表らはビデオメッセージを寄せる形での参加となった。
安倍首相は、「引き続き、できることはすべて行うとの方針の下、沖縄の基地負担軽減に全力を尽くしていく。新型コロナウイルスによる危機を乗り越え、沖縄が万国津梁として世界の懸け橋となるよう、沖縄振興をしっかりと前に進めていく」と語った。