染織技術者の平良さん受章/秋の褒章(黄綬)
上布一筋、製作60年余/「素晴らしい伝統を後輩へ」
政府は2020年秋の褒章受章者を2日付で発表した。全国802人のうち県内の受章者は計5人(黄綬2人、藍綬3人)。宮古島市では染織製作の技術者として宮古上布を支えてきた平良清子さん(82)が業務精励(文化財保護業務)で黄綬褒章を受章した。
平良さんが宮古上布の世界に足を踏み入れたのはまだ16歳のころ。上布づくりに精励していた母タツさんの影響が大きいという。
17歳になると、技術者の下地恵康さんの工房に出向き、熟練の織り手に囲まれながら腕を磨いた。タツさんからは藍染めを習った。
このころから、「上布以外の仕事をしようとは思わなかった」と話す。それから60年余、製作者としての道を歩み続けた。平良さんは今も上布を織り、後進の育成にも当たっている。
これらの実績と功労が認められて褒章を受章。平良さんは「評価していただくのはありがたいけど、私は特に褒章に値する仕事はしていないのですが」と謙遜する。長年にわたり上布に携われたのは「主人(恵勝さん)のおかげです。どんな時も仕事を手伝ってくれたし、2人だからやってこられた」と感謝した。
宮古上布については「他にはない高い技術で製作されている」と誇り、「多くの先輩方から受け継いだ素晴らしい伝統です」とかみしめる。製作者の高齢化と担い手不足で先行きが見通せない今だからこそ、思い入れは一層強いという。
平良さんは「上布づくりは家でもできる仕事。子どもの世話をしながら、家事をしながら、自分のペースでできる良い仕事ではないかと思う」と語る。「私もあと何年できるか分からないけど、元気なうちは続けたい。自分が持っているものは後輩にすべて教えてあげたい」と力を込めた。