一席に野原誠喜さん/第4回宮古島文学賞
秘祭の是非問う物語/二席仲間さん、佳作中里さん
第4回宮古島文学賞(主催・市文化協会)が5日、発表され、猫を投げる島の秘祭の是非を問う物語を書いた野原誠喜さん(34)=那覇市=の「猫投祭(マユーナギー)」が一席となった。二席は仲間望さん=北海道=の「レモン色の月」、佳作は中里咲耶さん=埼玉県=の「島の音」が選ばれた。野原さんは2度目の応募で頂点を射止めた。
テーマは「島」で、今回は全国35都道府県から132点の応募があった。応募数は前回から倍増した。最年少は13歳、最年長は88歳だった。第1次、第2次選考で8点に絞り込み、4日に最終選考会が行われた。
野原さんは「10年ほど書き続けているが当初はユーモアを目指していたが、年を重ね社会的なテーマを書きたいと思うようになった。本土の作家が書く沖縄の作品にも表層的だと違和感を感じる部分もあり、沖縄の作家の作品を多く読み直した。現代的な事と沖縄を結び付けるものを書きたかった。作品では、いかに説得力を持って覆すかというところに気を使った」と話した。祖父母が宮古島出身。受賞には「1カ月前に他界した祖父も若いころ小説を書きたい時期があったという。作品の中の方言は祖父から教わった。作品は祖父との共作のようなもの。応援してくれた祖父に報告したい」と喜んだ。
選考委員長は作家の椎名誠さん、委員は児童文学作家のもりおみずきさん、詩人で作家の大城貞俊さん。最終選考会は新型コロナウイルス感染症の影響で東京、沖縄本島、宮古島をオンラインで結びリモートで行われた。
市文化協会の饒平名和枝会長は「島をモチーフに独自の視点から深く掘り起こした作品が多くあった。生きることへの根源的な問い掛けや島が内包するさまざまな事象を多角的に描写し、表情豊かな島の姿を伝えている」と評し、「応募してくれたすべての方に感謝したい」とコメントした。
座喜味一幸市長は「全体的に質の高い作品が多かったと聞いてる。全国的な認知度はもとより、地元への浸透も広まっていることは喜ばしい限り。さらに文学・文芸への興味関心が高まることを期待している」と寄せた。
野原さんは2度目、仲間さんは3度目、中里さんは初めての応募だった。一席には副賞50万円、二席には10万円が贈られる。