市原さん詩で大賞/沖縄タイムス芸術選賞
日常の新発見を言葉に
優れた芸術活動および芸術文化の向上に功績のあった個人、団体を顕彰する2020、21年度(第55、56回)沖縄タイムス芸術選賞に、市平良池間に住む市原千佳子さんが文学(詩)部門で大賞に選ばれた。市原さんは「毎日見ているものでも、ある日突然新しいものを発見する時がある。それを言葉で表現していきたい」と話し、読み手の想像力をかき立てる作品づくりへ意欲を示した。
「かぐや姫が月に還って千年。竹には節があり、人間の背骨にも節があり、月に向かってゆく階段がある。荒唐無稽と解釈する人もいるが、そういう中に真実はある」と話し「詩は書く人だけでなく、読む人も想像力を働かせてほしい」という。
若い人たちに向け「最初に受けた感覚を大事にしてほしい。『なぜ自分はそう感じたのか』。感じた物と自分との間に通う道がきっとあるはず。その感覚をどんどん追求して個性にまで結び付けてほしい」と話した。
市原さんは、小2のころ家族と沖縄本島に移住。那覇高校3年の時、現代国語の授業で夏目漱石の「こころ」に出会い、「大人になっても純粋に悩んでいる人がいる」と感動。その日のうちに文芸部に入り、詩を書き始めたという。
東京の短大を卒業後、小学校の教員として勤務。2004年に故郷池間島に戻り、「宮古島文学」に詩やエッセーなどを寄せている。1985年「海のトンネル」で山之口貘賞、1992年「太陽の卵」で沖縄タイムス芸術選賞奨励賞、2011年「月しるべ」で丸山豊記念現代詩賞。07年エッセイ集「詩(し)と酒(しゅ)に交われば」で平良好児賞。
自身6作目となる詩集「ひとりの千年」には29編を収めた。人間の背骨の形をイメージし、文字を図形のように配置した遊び心満載のページも。