「十分な貯蔵」果たせず/平良港物流センター
台風時、依然品薄状況/「運用面の仕組み構築必要」
今年7月に供用開始された平良港総合物流センターのストック機能が発揮されていないことが分かった。2週にわたって宮古島地方に接近した台風11、12号の際には、市内のスーパーやコンビニなどで生活物資が品薄となった。市民の間から「前と何ら変わらない」と疑問の声が上がる。港運関係者からは「運用面で関係機関が意見交換する必要がある」などとして、市に場の設定を求める意見もある。
同センターは、沖縄本島と宮古圏域を結ぶ港湾貨物を取り扱う施設で、台風等の悪天候や災害時による物流の停滞を防ぎ、島内のストック機能を強化することなどを目的に建設された。
市港湾課が作成したパンフレットには「延べ床面積は4020平方㍍。荷さばき及び倉庫機能を設け、広大なスペースによるストック機能が強化、またこれまでの施設にはなかった冷凍冷蔵設置スペースも整備されており、台風等の悪天候時にも対応できる十分な貯蔵が確保される」と記してある。
しかし、現状は港運会社の荷さばき作業が中心となっている。
同センターを利用している港運会社によると「ストックする商品の種類や賞味期限、安全管理など運用体制が構築されていない」と指摘。港運会社が整備することになっている冷凍冷蔵は莫大(ばくだい)な費用が掛かることから採算性に課題が残っているという。
港運会社の役員は「消費者が台風時に最小限必要な生活品は何か、これがきちんとストックできるのかを店舗側と調整することが大事になる。そのためには消費者の考えを把握する市場調査の実施も重要」と話した。その上で「船舶会社や港湾会社、スーパー、コンビニなどの関係機関が集まって意見交換することが望ましい。市はその実現に向けて音頭取りをしてほしい」と話した。
台風の接近で宿泊客が足止めされ、食材の確保に苦労したというペンション関係者は「物流センターには大きな期待をしていたが、以前と何も変わらない。計画、建設中に運用面も協議し、供用開始と同時に機能を果たすべきではなかったか。旧市役所平良庁舎の跡地利用もそうだが、行政の対応が後手後手に回っている感がする」と語った。
市港湾課は台風11号が遠ざかった後、スーパーや港運会社に聞き取り調査を実施したという。市建設部の大嶺弘明部長は「適切な運用に向け行政、民間のそれぞれの役割を再確認し、課題が生じている原因についての共通認識を図っていきたい」と述べ、意見交換の場を作ることに前向きな考えを示した。
平良港総合物流センターの事業費は建築、電気、機械合わせて約17億3千万円。国交省の補助事業で補助率8割で建設された。