サシバ飛来調査50回目/伊良部
保全への取組で認識共有/節目記念し講演、活動報告
伊良部島におけるサシバ飛来数調査の50回を記念した講演会と活動報告(市主催、宮古野鳥の会、日本自然保護協会共催)が16日、伊良部島小中学校で行われた。研究者の基調講演、調査に携わった宮古野鳥の会、伊良部島小中学校の活動報告を通して節目を祝うとともに、さらなる保全の取り組みへ認識を共有した。
サシバの飛来調査は、久貝勝盛氏(現宮古野鳥の会顧問)を中心に1973年に始まった。以来、半世紀にわたり宮古野鳥の会の会員らと調査を続けてきた。
77年には県が10月を「サシバ保護月間」と定め、2008年には環境省レッドリスト「絶滅危惧種Ⅱ類」に指定された。
久貝氏らの調査は、それらの根拠資料になるとともに、サシバの個体数の増減傾向を知るための貴重な資料として内外から高い評価を得ている。
サシバの生態と保全に関する研究を実施している東淳樹氏(岩手大学講師)は「サシバにとって宮古島とは?│子育てや渡りの暮らしぶりから」と題し基調講演を行った。
東氏は「伊良部島は日本で繁殖するサシバの数を知るにはうってつけの場所」と説明。国内で50年間、野生の観察をしている事例は見当たらないとし「久貝氏の飛来調査は誇りであり、子や孫に保護について伝えていける素晴らしい取り組み」とたたえた。
繁殖地、中継地、越冬地で国内や外国のさまざまな地域の人たちと、保護に向けての情報を共有することができたとし「これはサシバのおかげ。今度は人間が手を差し伸べる番だ」と呼び掛けた。
宮古野鳥の会会長の仲地邦博氏は、これまで実施してきた飛来調査結果を示し、70年代は4~5万羽を記録していたが80年代半ばから減少傾向が続いていることを報告。さまざまな要因を挙げ森林率の低下を懸念した。
仲地氏は「調査は仕事をリタイアした人に頼らざるを得ない状況。中高生の会員を増やすことが重要」と課題を述べた。
伊良部島中生徒会は▽サシバの俳句・ポスター募集▽保護集会▽パレードの実施│などの取り組みを発表し「私たちに何ができるのか。地球規模で考え、足元から行動していく」と決意を示した。記念講演会に出席した久貝氏は本紙取材に「調査結果はさまざまな場所で資料として利用されている。小さな島から発信し続けて良かった。あっという間の50年で、継続は力なりを改めて実感した」と話した。