被災者にサタパンビン
岩手での支援活動語る/上野出身の伊藤さん
東日本大震災被災地の岩手県北上市に住み、手作りのサタパンビンなどを避難者に届けた上野豊原出身の伊藤美智子さん(53)と、上野小児童の交流会が20日あった。伊藤さんは津波災害の様子や自らの体験を語り、子どもたちに災害の怖さや助け合うことの大切さを伝えた。交流会後、児童や教職員から寄せられた岩手県への義援金を伊藤さんに託した。
伊藤さんは、結婚を機に岩手県に移り住んだ。現在は、沖縄料理店を営む。
24日のトライ大会出場を申し込んでいた夫との来島を予定していたが、震災の影響で夫が出場を辞退。飛行機の切符があったので一人で帰郷した。
「おにぎり1個を5人で、ミカンを1房ずつ分けて食べている」。震災の悲惨な状況を知った伊藤さんは「考える前に体が動いていた」という。
陸前高田市の避難所には、サタパンビン500個やおにぎりなどを自ら届けた。「子どもたちは、小さい子から順番に並んで待っていた。腹を空かした子どもたちは、われ先に群がるかと思っていたが、そうではなかった」。厳しい環境の中で、子どもたちはきちんとルールを守っていた。
次に宮古市の避難所(田老小学校体育館)を訪ねた。向かう途中の道路の右側の建物は残っているのに、左側には何にもなくがれきの山。すべてが津波に飲み込まれていた。
田老小では、祖母が迎えに来た児童1人だけが亡くなった。伊藤さんは担任の教師が、この子の死を悔しがっていた様子を涙ながらに話した。
同児童以外の田老小の児童たちは、裏山に逃れ助かったという。
同校では、父母を亡くした児童も多い。「お母さんはどこに行ったの」と泣く子もいた。一方、親を亡くした子をかばったり、優しく接している子どもたちの姿も見られた。
上野小の児童たちに「皆さんも、思いやりを持ち、互いに助け合いながら、学校生活を仲良く過ごしてください」と語り掛けた。
5回の支援活動で作ったサタパンビンは、約1700個。避難所や消防署などに届けた。
伊藤さんは毎年、母校の上野小に雪を届けている。子どもたちの質問に「今年も届ける」と約束した。