伊良部断水問題 市が敗訴、損害賠償へ/福岡高裁
差し戻し審で判決/原告代理人「画期的判決」
2018年のゴールデンウイーク期間中に伊良部島の南区で発生した断水問題で、島内で宿泊施設等を営む2法人が期間中に発生した損害の賠償を宮古島市に請求した民事裁判で、福岡高等裁判所第3民事部(久留島群一裁判長)は21日、市に給水義務の不履行があったとして2法人へ損害賠償を命じる判決を言い渡した。この判決は最高裁で高裁判決が破棄され、差し戻されており、判決が確定した。判決を受けて嘉数登副市長は「判決文の内容を精査して今後の対応については検討したい」とコメントした。
断水の原因はボールタップの損傷によるもの。市側は水道施設であるボールタップの損傷による断水はまれで、市には過失がないことから水道法所定の給水業務をまぬがれ債務不履行による損害賠償責任は負わないと主張していた。
しかし判決では金属製のボールタップの支柱や弁が水に濡れた状態で力を受け、約40年使用された事実関係からすると、市には破損の予見可能性や結果回避可能性があったと認めるのが相当で、予見義務のほか、綿密な点検、配水池への流入量の正確な把握や相当期間の取り換えなど、破損および断水を回避する義務があり、それが水道事業者に過大な負担を課すともいえないと指摘し、市は自身に帰責性のある給水義務の不履行があったため、断水により2法人に与えた損害を賠償する責任を負うとした。
原告側の1人は「長かった。こうしたことは宮古島市だけに限らず全国の水道行政でたくさんあると思うので、この判決を機に襟を正すことにつながることを願ってる。水道条例だけで行政が『何があっても責任はない』と言うことが通らなくなった判例になったと思う」と話した。
原告側代理人の尾畠弘典弁護士は「画期的な判決だと思う反面、こんな当たり前のことの結論を出すのにこれだけ時間が掛かったかと思う気持ちもある。この判決は、間違いなく他の水道事業者にも波及してくるし、逆に水道を利用するすべての人に関係することなので意味合い的にはとても大きいと思う」とコメントした。
当時の断水は、4月27日午後~5月1日未明までの間に継続的に発生し、ゴールデンウイーク期間中ということもあり、島内の観光施設などは混乱した。
この断水により営業損害等が発生したとして、水道事業を営む市に対して原告側の2法人は約160万円と約190万円の賠償を求めた。賠償額は約90万円と約110万円となった。