「人間らしいケア」を説明/ユマニチュード講演会
講師のイヴ・ジネスト氏/否定的な言葉に警鐘も
「ユマニチュード講演会IN MIYAKO」(主催・県認知症疾患医療センターうむやすみゃあす・ん診療所)が14、15の両日、マティダ市民劇場などで開かれた。初日は講師のイヴ・ジネスト氏が「見る・話す・触れる・立つ」の四つの柱を基本に「認知症ケア理論」と「具体的な技術」などを分かりやすく説明した。
ユマニチュードは「人間らしいケア」と称され、生涯を通して尊厳を持って「人間らしい」存在であり続けることを支えるためのケア。
ジネストさんは、四つの柱のうち「見る」について、目を合わせて顔を近づけることで、患者の脳の中に革命が起こり、目の奥から脳に「愛と信頼のホルモン」とされるオキシトシン(下垂体後葉から分泌されるホルモン。ストレスを緩和し幸せな気分をもたらす)が出ると説明。「脳のスイッチを入れるようなもの」との認識を示した。
「話す」については「相手のことを大切に思っていると伝えるため言葉を多くすることが必要。ゆっくりとした穏やかな言葉は相手も安心してくれる」と話し、「触れる」については、「自由を奪っている人と感じさせないように、大事と思う気持ちを伝える触れ方をする」と語った。
「立つ」については、「寝たきりの人の9割は、本来するべきことをしてたら寝たきりになることはなかった。人は亡くなるその日まで立つことができる」などと紹介し、話すことのできない寝たきりの患者が、回復していく様子を収めた映像も披露した。来場した多くの市民らは、講話に真剣に耳を傾けていた。
また、15日に行われた実践指導では、住宅型老人ホームで定時に自宅に帰ろうとする利用者への対応について説明。利用者に対して「ダメ」や「ノー」といった否定的な言葉を使わないことが重要で、否定的な言葉がストレスや不安を引き起こし、自宅に戻りたいと感じさせると強調した。
そのため、「帰宅願望が出た後の対応」ではなく、「帰宅願望が出ないように事前に対処する」ことが重要であり、職員間でこのアプローチを共有する必要があると語った。
ジネスト氏はフランス出身で、40年間にわたり介護の現場に携わった。最初の20年間は患者を拘束していたが、後の20年間は患者に愛情を注ぎ、大切に思う気持ちを相手に分かる形で表し、前向きに生きる気力を取り戻す技術であるユマニチュードを開発した。