行雲流水
2011年6月1日(水)23:05
IAEA(行雲流水)
IAEA(国際原子力機関)の福島原発事故調査が終了した。権威ある第三者機関により、事故の実態が公表される意義は大きい
▼これまで、破損箇所が不明のまま、〝状況証拠〟ばかり聞かされてきた。状況証拠から推測される「原因」を質すと、当局側は希望的「推測」を「多分…」という形で答える。この当局側の見解に対し、在野の専門家の多くは異を唱えた
▼時間の経過とともに当局側の見解は楽観的過ぎたことが次々に判明。海水注入の中断をめぐる混乱もあって、国民はますます疑心暗鬼に。IAEA調査団により、これまでの事実関係が明らかにされ、どう評価されるかが注目されていた
▼「事実」と「推測」(見解)を明確に区別しないと混乱する。視聴者は結論を得たがるから、往々にして「推測」が「事実」として受け取られがちだ。記憶に新しい〝村木事件〟も、検事や世論の憶測・思い込みの所産だった
▼IAEA報告書についても、「事実」と「推測」を峻別して読む必要がある。詳細はまだ明らかではないが、少なくとも「事実」の部分だけはしっかり押さえて、今後の議論を理解する基礎にしたい。「見解」の部分は、1から100まである見解の一つとして冷静に受け止めればよい
▼IAEA報告を受けて、国のエネルギー政策の見直しをめぐって議論が活発になるものと思われる。今後、太陽光や風力の多角的活用方法など実用化モデル事業も盛んになるであろう。離島における「エネルギーの地産地消」は、東南アジア諸国の注目を浴びるテーマになるに違いない。