「法廷で真実述べて」/アトール前事故
遺族が民事で提訴
3年前にアトールホテル前で発生した軽自動車と2人乗りオートバイが衝突した事故で、オートバイの後部座席に乗っていた男子高校生が死亡し、運転過失致死罪に問われた女性の逆転無罪判決を受け、この男子高校生の母親が先月12日、この女性に対して計3180万円余の損害賠償を求めて那覇地裁平良支部に提訴した。
提訴した母親は「法廷の場で本当のことを話してほしい。私としてはこの裁判で事故当時、誰が運転していたのかをはっきりさせたい。この事故を起こした罪を反省し、誠心誠意償ってほしい」と述べた。
訴状では、この女性が自動車損害賠償保障法の「運行供用者」に当たり、事故によって生じた損害を賠償する責任があるとしている。
第1回口頭弁論は同地裁平良支部で16日に行われる。
この事故は、2008年11月30日に市平良下里の国道390号で発生し、オートバイの後部座席に乗っていた男子高校生が同12月6日に死亡した。
酒気帯びの状態で軽自動車を運転し、男子高校生を死亡させたとして、女性が自動車運転過失致死と道路交通法違反の罪に問われ、一審では懲役3年の実刑判決を受けた。
しかし、女性の弁護側は自動車運転過失致死については「事故当時は同乗していた長女(当時15歳)が運転していた」と無罪を主張。
控訴審判決で福岡高裁那覇支部の河邉義典裁判長は弁護側の主張を認め「被告が運転していた事実を推認させる客観的な証拠はなく、同乗者らの供述はいずれも信用できず、合理的な疑いが残る」と判断し、自動車運転過失致死罪について一審の判決を破棄、逆転無罪を言い渡していた。
福岡高検那覇支部は昨年8月31日に上告断念。女性の無罪が確定した。事故当時誰が運転していたのかについては現在も真相が特定されていないという状況となっている。
有罪、無罪または免訴の判決が確定した事件については、刑事訴訟の原則(一事不再理)で再び審理をすることができなくなったことから、今回は民事訴訟で損害賠償請求となった。