行雲流水
2011年8月15日(月)22:33
8月(行雲流水)
8月は戦争の実相を直視し、平和への誓いを新たにするときである。「過去に目を閉ざす者は結局のところ現在にも盲目になっている」。ドイツのヴァイズゼッカー元大統領の言葉である
▼関連して、操作された熱狂ほど危険なものはない。絶叫するナチスドイツのヒトラーの演説があったし、北朝鮮のアナウンサーの絶叫は滑稽である。東条英機首相が横暴で独善的な小人物で、中学生ぐらいの頭脳だった(辰野隆帝大教授)ことは阿川弘之の『大人の見識』に詳しいが、熱狂的な演説もあって、多くの国民は真の姿を見抜くことも、それに対処することもできなかった
▼8月は甲子園の高校野球の季節でもある。球児たちの全力で展開するドラマに多くの国民が酔いしれる。特に、郷土代表チームの試合には惜しみない拍手を送る。自然な愛郷心の発露である
▼社会の変化に伴って地域的なつながりが希薄化し、地域コミュニティーが衰退する傾向の中で、偏狭になりがちなナショナリズムではなく、ゆがんだ形のグローバリズムでもない愛郷心は、地域再生のためにも重要である
▼沖縄では盆は旧暦の7月に行う。13日に先祖の霊を迎えて供養、15日に送る。徳島の阿波踊りや長崎の精霊流し、沖縄中部のエイサーや八重山のアンガマ、宮国の綱引きなどが行われ霊を慰める。彼岸に対する考えはそれぞれだが、亡くなった人への思いは真実である
▼ともあれ、帰省していた人たちは帰っていった。ふるさとで得た安らぎが、明日への活力になるといい。