75年前の式典映像を初公開/独逸皇帝感謝碑建立60周年
住民らの姿生き生きと/ドイツの研究者が市に寄贈
上野宮国沖合で遭難したドイツ商船の乗員救助に感謝して1876年、平良に建立された「独逸皇帝感謝碑」の建立60周年記念式典(1936年)にドイツ国代表で出席したトラウツ博士のコレクションを研究しているドイツ・ボン大学のラインハルト・ツェルナー教授らが宮古島を訪れ21日、式典の様子を収めた記録映像や写真、絵はがき、新聞の切り抜きなどを公開した。式典の記録写真は数点確認されているが、映像は初公開。ツェルナー博士は、これらの史料を収めたCDを宮古島市に贈呈した。会場の市総合博物館には、市民らが訪れ75年前の国際的大イベントを盛り上げた住民らの姿に感動の様子を見せていた。
トラウツ博士は、1930~38年まで京都の日独文化研究所の所長を務めていた。博士が収集した日本に関する史料は膨大で、50年ほど前からボン大学に保存しているという。
宮古についてはツェルナー教授らが式典映像(3分20秒)や、写真12枚、子どもたちがトラウツ博士に託した絵はがき40枚、新聞記事約100枚などを集め史料化。今回、12月開催予定のトラウツ博士に関するシンポジウムの下調べや、写真や映像に登場する人物、場所、はがきを描いた子どもたちの確認を目的に来島し、公開となった。
映像にはトラウツ博士夫妻を盛大に出迎える風景や、式典の様子、クイチャーや棒振りなどを踊る人々、宮古角力などを収録した。
式典は11月13、14の両日。式次第に「小学生五千人、旗行列」とあるなど規模の大きさをうかがわせる。
絵はがきを描いた児童は下地小5人、西辺小5人、砂川小6人、西城小24人の計40人。ツェルナー教授は「子どもたちの絵はがきを見た時は、感動した。同じ年齢のドイツの子どもたちに、将来の夢や平和を願う思いを伝えようとした。戦前にそういう民間レベルの交流があったことを示す史料はなかなかない」と話した。
「トラウツ・コレクション」の研究の意義については、日独関係発展のベースに成り得ることや、日本とドイツ、宮古の過去の関係を明らかにできることなどを強調した。同研究は、宮古の歴史家たちと共同で進めたい考えを示した。
CDを受け取った仲宗根將二宮古島市史編纂委員長は贈呈に感謝した上で「映像に出てくる顔ぶれや広告欄の人たちは、面識はないが、活字の上では年中見ている名前ばかり。親近感を持って見させていただいた」とあいさつした。
宮古郷土史研究会の下地和宏会長は「映像では75年前の人々の姿がいきいきと映し出された。1級の史料と言わざるを得ない。これから、パネルにして展示会を開き多くの人々に見ていただきたい」と史料の提供を喜んだ。
「独逸皇帝感謝碑」は1956年、「ドイツ皇帝博愛記念碑」の名称で、県指定の文化財に指定された。