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社会・全般
2008年4月13日(日)15:07

舞踊で支え合う社会を/「障害者支援・日舞」

日舞の西川流教室、知的障害者を支援

 

 市街地の賑わいから少し離れた平良城辺線沿いに教室はある。おけいこの日でも和服姿で練習に臨む子どもたち。ここには健常者も障害者もない。踊りを通し、お互いを研さんし合う。

 指導するのは日本舞踊・西川流師範の西川壱瑚(・いちこ・)さん。「障害者支援チャリティー公演」を開いて昨年で三回目を迎えた。西川さんは「障害者と健常者が共に支え合える社会に貢献できることは何だろうと考えた時に、私には踊りがあった」と話し、教室には心のバリアフリーを掲げる。


 宮古島市となった二〇〇五年十一月、第一回障害者支援チャリティー公演は、西川壱瑚教室と玉城流・池間美代子教室の日舞・琉舞のコラボレーションで催された。みやこ学園(伊志嶺博司理事長)の利用者、保護者、職員らも参加して、賑やかな舞台を繰り広げた。来場した伊志嶺亮市長は「障害者の自立と社会参加の促進に多大な支援となる意義深いもの」とあいさつした。


 翌年の第二回目は、西川壱瑚教室の日舞だけで行われ、このとき、新名取の西川瑚怜(・こざと・)さんのお披露目も行われた。みやこ学園に通う本永太陽さんや宮古織物組合に通う下地智枝さんら五人は、端唄の「かっぽれ」を堂々と披露し、大かっさいを受けた。城辺手話サークルも特別出演、手話ソング「未来へ」「なだそうそう」などを披露した。


 昨年の三回目は、師匠の西川扇一郎さんも特別出演、花を添えた。また、本永さんらも軽快な「ロックお富さん」を披露した。教室に通って四年になる本永さんは、だんだんと自信をつけ、「将来、名取を目指す」と張り切る。西川壱瑚さんは「毎回、大道具の提灯や藤の花、小道具の杵や槍、大杯、手まり、藤の枝、そして衣装など家族の皆さんが手伝ってくれ、みんなで手作りの楽しさを味わっています」と笑む。


 知的障害のある一人息子・将志さんの恩返しにと始まった「障害者支援チャリティー」。西川壱瑚さんは「障害者と健常者が、一緒に支え合える社会になれたらいいな。踊りがみんなの夢の架け橋になるよう、この子たちを見続けていきたい。将志も周りのみんなに助けられて今年二十歳を迎えた。これからは自分のできることでお返しをしていきたい」と話す。  


舞踊で息子の恩返し 日本舞踊「西川流」 師範・西川壱瑚さん

 教室を開いて十四年になる西川壱瑚さん。いつも和服を楚々(そそ)と着こなし、柔和な顔立ちが生徒たちに信頼感を与えるようだ。とは言え、ひとたびけいこに入ると厳しい一面も。


 「舞踊は行儀見習いでもあるので、あいさつから、所作まで一通り教えるが、最近では私が言う前に、先輩のお姉ちゃんたちが小さな後輩たちに教えているので助かる」 障害者支援チャリティーを始めたのは、息子・将志さんが、みやこ学園で約二年お世話になったのがきっかけ。


 「沖縄本島に住んでいた時、将志は生まれ、乳児期に脳梁(・のうりょう・)欠損といわれた。知的障害とわかった時はショックと言うより、これからどうやってこの子を育てていこうか、その思いの方が強かった」と話し、それからは同じ境遇の母親たちを訪ねお互い情報交換して子育てに専念した。「しゃぼん玉飛んだ、壊れて消えた、という歌がきらいだった。妄想に取りつかれ、階段が下りられなくなったり、アイロンがかけられなくなったりした」



 将志さんが生まれる前から、日舞の教室には通っていた。「私の子育てノイローゼをいやしてくれたのは踊りだった。とてもアットホームな教室だったので、いつも将志をおんぶして出掛けた。夫が長男なので将志が小学一年の時、宮古に帰った。大きくなって踊っている私を励ましてくれたのは将志だった。今年、ようやく沖縄高等養護学校を卒業した。これからは、親子でお世話になった皆さんにお返しをしていきます」と柔和な顔に笑みがこぼれる。


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