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企画・連載私見公論
2011年10月21日(金)22:04

新企画・私見公論①地域力(地域の力量)が問われている

岡村 一男(おかむら・かずお)

 

岡村一男

岡村一男

  魅力と活力に満ちた地域づくりの課題は多岐にわたる。その中からテーマを選び、自分なりに考察し、論考を試みるコラム(時評欄)だと理解している。
 さて、はじめての土地や街を歩くとき、一度訪ねただけでもう十分と思う土地や街がある。一方、またぜひもう一度訪ねてみたいという気にさせ、心に残る土地や街もある。さらにもう一歩進めて、できれば住んでみたいというほどに誘惑に駆られる土地や街もある。


 地域づくりの過程で、それらの差がどこで生じるかを検証することは極めて大切な作業である。地理的条件や自然の豊かさはおくとして、土地や街の歴史や文化・伝統のユニーク(独自性)さ、産業や企業の創出、次代を見据えた人づくりのための先行投資等の特色ある取り組みは一層魅力を増すものである。
 さらにそこに住む人々のライフスタイル(生き方)や暮らしぶり、地域づくりへの確かなビジョン(展望)とそのための市民レベルにおける地味な努力と執念が大きく作用することがわかる。


 最近、とみに「力」を強調した出版や主張が目立つようになった。「生きる力」「生み出す力」「見通す力」等々である。「地域力」もそのカテゴリー(範疇(はんちゅう))に加えたい分野である。
 それらの「力」にはいくつかの共通したアイデア(構想)があることに気付く。一つにはある目標に向かって伸びたいとするエネルギーを伴う点である。二つには向上への強い意思が秘められている。三つにはその力を増すことによって自らのしあわせや豊かな人生、そして魅力ある地域づくりにつなげたいとする強い願望である。そして四つには、その実現のための方策と努力を個人や組織やコミュニティー(地域社会)のメンバーに求めている点等である。


 これらの四つのキーワード(課題解決のための鍵となることば)伸びようとするエネルギー、向上への強い意思、豊かさへの願望、そして具体的な方策と惜しまない努力こそ私たちが求める魅力ある地域づくりにとって欠かせないほどである。
 島のステータス(島のもつ総体としての地位)を人々の生活程度や公共への意識の高さ(連帯感や公徳心と言ってもよい)、個人のライフスタイル(生活に対する価値観や人と人との絆)等を総合した民度という尺度で測るとき、私たちの住む地域は住みよく、魅力的で誇り得る風格を備えているだろうかとの疑問に突き当たる。


 島を美しくというキャンペーンが実効あるものにまで高められない実態、公共の器物破損が常に話題となるモラルの低さ、交通マナーや青少年を取り巻く環境等々、数えあげれば市民一人一人の出番と行動が待たれる事例が多過ぎる。さらに日々の暮らしぶりが内向きへと進み、自分さえよければとの生き方が目立ちつつあることへの懸念もある。
 このたびのわが国を襲った大災害の中で、ある被災者は多くのものを失ったが得たものも大きかったと苦しい胸の中を語り、強く印象に残った。「最も大きく得たものは何か」との問いに躊躇(ちゅうちょ)することなく、「人間の絆」と「連帯感」を挙げた。日常生活においてややもすれば疎(おろそ)かにされがちな宝物が人が人らしく生きていく上で最も強力な武器であり、人間のしあわせや地域づくりの原動力であることを教えてくれた。
 島の魅力を創造する努力の中に地域力とは何か、それを高めるための方策とは、の問いかけがある。地域


力をコミュニティー キャパシティーと表現するが、キャパシティーとは地域のもつ発展への力量です。何かを為し遂げる能力のことである。キャパシティーを規定する要素は地域の歴史や文化、経済力と産業の創出、人々のライフスタイル、そして質の高い教育等々であろう。
 従来の地域開発のデザインが都市対地方という構図の中で描かれ、進められてきた。地方に住む者、離島に住む者は常に都市に顔を向け、その格差を嘆いてきた。しかし、いまその構図は変化した。その変化させる力こそ地域力でなければならない。地方に住む者が自ら住む地域を自らの力でデザインし、自分たちの求める生活を創造していく夢を描く方向へとシフト(転換)した。地域のもつ力量が真に試されるときが来た。


 その力を発揮するための条件はいろいろある。その中から敢えて一つだけ挙げよと言われれば、地域の将来像(コミュニティー グランドデザイン)をコミュニティーのメンバーが共有し、その実現のための課題を具体的に設定することを挙げたい。
 宮古島市が誕生して6年、いよいよ中学生へと進んだ。形だけが先行し、内容について十分な検証がなされているとは言い難い。グローバル化の波にのってコミュニティーの形も質も変化した。地域力を高めるための英知と行動が求められる。アジアの果てに幸福度世界レベルの小さな島があってもよいではないか。

 

岡村一男(おかむら・かずお)
 1932年生まれ。宮古島市(平良)出身。61年琉球大学教育学部卒。中学校、高校で教職に就く。72年南カリフォルニア大・大学院修士課程修了。86年県立伊良部高校校長、89年県立宮古高校校長。93年定年退職。

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