企画・連載行雲流水
2011年10月29日(土)9:00
来間島の御嶽由来記(行雲流水)
来間島には174人(男82人・女92人)が住んでいる。豊作祈願の祭祀「ンナフキャ」が年2回、来間島でも行われている。この祭祀の由来を300年前の『御嶽由来記』は次のように伝える
▼荷川取村の湧川まさりゃはある日エイを釣った。エイは美女と化し、まさりゃと結ぶ。後日、まさりゃの子と名乗る3人に導かれ竜宮に招かれる。竜宮で過ごした後、不老不死の霊薬の湧く壺を土産とする。まさりゃはこの壺のおかげで富貴となるが、村人に自慢したため、壺は白鳥となって東方の宮国村に飛び、スカプヤの木に止まって消えた
▼スカプヤの主人は「白鳥は富貴の神、9月の乙卯の日から3日間、物忌精進して願い事をしたら、富貴になれる」との夢を見た。ある夜、大世積綾船という神船がスカプヤ崎に着き、それ以後、スカプヤはみるみる富貴となった
▼このような伝えがあって、毎年9月中の乙卯より3日間は、富の神が島内各地を訪ねて、五穀の種子を蒔くので、人も牛馬も畑などに出さず、物忌精進するようになったという
▼来間島にはこの伝えが今に色濃く残る。4人の神女がこの祭祀をつかさどる。雨乞い座に籠もり、村のユー(富)を祈願。村人が寝静まった3日目の夜中2時から最後の祈願。下仕えの神女4人を加えた8人。ユーソテル(富を満たす)サラピャース(豊穣祈願)のアーグを40分ばかりはやす
▼神女は高齢だ。神女のエネルギーは並ではない。島に根差した神女の思いが住民すべての共有であることを祈りたい。