シリーズ 島のくらしと環境<5>
水のすべてを地下水に頼っている宮古島は、1980年代後半、水質汚染が緊急テーマとなって「宮古島地下水水質保全対策協議会」(88年)が設立され、「天女の水まつり」や全島湧水巡り、手作り石けん教室、地下水勉強会など、さまざまなイベントが繰り広げられ、住民の水に対する意識が高揚した。ところが最近、こうした動きが以前と比べて少なくなった。宮古島の地下水は本当に大丈夫なんだろうか。
水は上水(飲料水)と下水(生活排水)に分けられる。地下からくみ上げられた私たちの飲み水は、再び排泄物や生活雑排水となって、地下に潜るという仕組みから考えると、それは循環している。そのために水を汚すことは、自らの生活を汚すことになることを認識しなければならない。宮古で特に問題になっているのは、下水道の捉え方。現在の普及率は57・4%(3月末現在)。県内でも低い状況にある。
個人差はあれ、人間は1日平均2・5~3リットルの水分を摂取するといわれている。当然、水無しの生活は考えられない。ところが、水に対する考えは、当たり前に吸っている空気のように、その重要性を認識しようとしない。それどころか、生活排水や農・産業排水で水質汚濁に加担している。水に対する住民の意識を常に喚起する意味でもあらゆるイベントを通じ、訴えていく必要がある。
1989(平成元)年から熱帯植物園を中心に開催されていた「天女の水まつり」(地下水協主催)は、宮古島市が合併した2005年で締めくくられ、2010年から城辺字福里にある地下ダム資料館で実行委員会を中心に「宮古水まつり」が開かれている。「水はすべての命の源、水への感謝の心を」をテーマにした水まつりは、水利施設への理解と関心を高めるとともに、雨乞いをしていた時代の歴史や文化を後世に継承することなどを目的に行われている。
そもそも人間が生活すること自体、環境や水を汚すことにつながる。常に意識して使わない限り、逆に自らの生活を困難なものにする。市民の飲み水を預かる市上下水道部の浄水課・水質保全係は、年1回、50項目の浄水水質検査を行っている。残留塩素濃度や硬度などは毎日。池間昌克課長は「袖山浄水場、加治道浄水場、伊良部浄水場の3地点で採水し検査を行っているが、ほぼどの項目も基準値以下で特に問題はない」と話す。とはいえ、市民に水を大切にする意識が薄れたとき、そのつけは自らが払わなくてはならない。