背景に高失業率や離婚/児童虐待
早期発見、援助訴え/防止推進月間で講演会
児童虐待防止推進月間に伴う「児童虐待防止推進講演会~守るのは 気づいたあなたの その勇気~」(主催・宮古島市)が10日市働く女性の家(ゆいみなぁ)で行われ、沖縄大学の山内優子非常勤講師が「児童虐待防止に向けて~子どもたちを守るため、私たちにできること」の演題で講話した。山内さんは、沖縄の児童虐待の背景には高い失業率や離婚率、全国最下位の県民所得など沖縄社会の「貧困」があることを指摘した。
あいさつで、市福祉保健部の国仲清正部長は「虐待に苦しむ子どもを出さないために市民一人一人に何ができるかを考え、子育てに不安を持ち悩んでいる人たちへの支援の輪を広げることが大切。きょうの講演会が子どもを生み、育てやすい地域づくりに寄与することを願っている」と述べた。
講演の前には、市家庭児童相談室に寄せられた児童虐待に関する相談件数の状況が報告された。
相談件数は、2008年度が613件、09年度が492件、10年度は527件。
そのうち、実際に虐待が確認されたのは08年度が18件、09年度が21件、10年度が23件と増加している。
虐待の内容で一番多かったのがネグレクト(育児放棄)で43%。次いで身体的虐待が39%、心理的虐待と性的虐待が9%となっていることが説明された。
山内さんは、全国平均の2倍の失業率や最下位の県民所得、1985年以降全国一の離婚率、母子家庭の勤労月収10万円未満が39・8%など沖縄社会の「貧困」の実態を紹介し、こうした社会の貧困が育児放棄、児童虐待の背景になっていると訴えた。
こうした現状にありながら、対策を講じ切れていない「行政の貧困」も指摘。子育てを支援する「児童館」の充実などを呼び掛けた。
山内さんは「子どもへの虐待は最大の人権侵害。発生要因を減らす努力が必要。虐待はどこでもあり早期発見、早期援助が大切。周囲が勇気を持って通告することが親を犯罪者にせず、親子を救う確実な方法」と話した。
会場にはたくさんの市民が詰め掛け、山内さんの講話内容に真剣な表情で聞き入っていた。