ペットボトルの再利用を/慶應大・市共催でシンポジウム
慶應義塾大学と宮古島市の共催によるシンポジウム「ペットボトルのリユース事業とごみ問題解決に向けてダイヤモンド被覆技術の活用」が12日、市役所平良庁舎で開かれた。酒瓶のようにペットボトルを洗浄しリユース(再利用)することを可能にする最新技術の現状と、宮古島で事業化を目指す上での課題や実施効果などについて専門家がそれぞれの立場から意見を述べた。
ペットボトルリユースのためのダイヤモンド被覆技術とは、ペットボトルの内側を「ダイヤモンドライクカーボン(DLC)」という炭素薄膜でコーティングすることで、ボトルへの飲料成分やにおいなどの浸透を防ぎ、洗浄、再利用を可能にする技術。慶應義塾大学理工学部が大手ビールメーカーと共同研究を行い製造技術を確立させた。今回のシンポジウムでは、この技術を活用し日本初のプラスチック容器循環社会システムを宮古島で構築することを目指すために、実現に必要な技術的課題などを認識することなどを目的に開催された。
慶應義塾大学理工学部の鈴木哲也教授は「ダイヤモンド被覆技術の現状と課題」として、DLCでコーティングすることで使用済みペットボトルのリユースが可能になるだけでなく、飲料の酸化を防ぐ効果もあることを説明。リユースを実現させるためにはペットボトルの回収システムの構築が必要との考えを示した。
DLCの事業化に取り組むベンチャー企業オールテック(神奈川)の白倉昌社長は、宮古島市でリユースを事業化した場合に期待される効果として▽宮古島をペットボトルリユース全国拡大のスタート地点にできる▽リユースに関わる雇用の増加、人材育成-などを挙げた。長期目標としてサトウキビなど天然資源を由来とするバイオプラスチックのペットボトルの活用を掲げた上で、泡盛、ビール、マンゴージュースなどのペットボトル商品の開発などを提案した。
三菱重工食品梱包機械(本社・愛知)の原直史関西支社長はDLCコーティング活用の技術課題として、膜の最適基準の決定方法、リユース回数や膜の状態の確認方法などを指摘。プラスチックの製造販売を行う日本興産(埼玉)の上地護仁社長は環境に影響を与えない製品作りの取り組みなどを語った。
地元からは、多良川の砂川佳一会長とコーラル・ベジタブルの米田隆己常務が参加し、自社商品のペットボトル化の可能性について考えを提示。砂川会長は島外販売分をタンクでまとめて運び、現地でペットボトルに詰めることが可能になれば輸送コストの削減に繋がるとの考えを示した。