行雲流水
2012年1月13日(金)22:53
ジュゴン(行雲流水)
辺野古の海を遊泳するジュゴンが、以前、県紙で大きく報道された。肉や油をとるため、世界各地で乱獲され数が減ったので、保護動物になった
▼1955年、当時の琉球政府は天然記念物に指定、復帰に伴い国指定になった。南西諸島は分布の北限だ
▼ジュゴンは、哺乳の姿が人間にそっくりなので人魚として知られる。宮古に伝説がある。伊良部下地島で、人面魚体の〝よなたま〟が釣り上げられた。珍しいことなので村人と会食するため、火にあぶった。危機を感じたよなたまは、助けを求めた。まもなく、大津波が押し寄せ村ごと流された。よなたまとはジュゴンのこと
▼ジュゴンは、60年頃奄美大島で、79年名護で捕獲された。宮古では65年池間島で捕獲された。60歳ぐらいの雄だ。剥製となって、今は琉球大学の風樹館に眠る
▼未明に運び込まれた「辺野古アセス評価書」は、3頭のジュゴンについて、調査・予測結果などを記載する。「海草藻場でのジュゴンの食跡は、嘉陽地区で頻繁に確認され、辺野古地区では確認されなかった」とする。施設等の存在に伴う「海面消失によりジュゴンの生息域が減少することはほとんどない」、また「餌場となる海草藻場の生育域を減少させることはない」と断言する。一方では、「行動範囲が比較的広い」ジュゴンがいたことも認識している
▼国が指定した天然記念物を、同じ国が無視する事態が生じかねない。よなたま伝説は、人間社会に対する警告でもあろう。