「10年前の自分」と再会/狩俣中98年卒業生
15年ぶりに自分宛の手紙届く
当時の中学生に夢を持つことの大切さを知ってもらおうと、教師が書かせた「10年後の私へ…」と題した手紙がこのほど、卒業生たちの元に届いた。「宇宙飛行士」「小学校の先生」「看護師」「ケーキ屋さん」…。夢がかなった人もかなわなかった人も「あのころの気持ちを思い出して、もっと頑張ってみようかなという気持ちになった」。当時の中学生は今年30歳を迎える。
自分に宛てた手紙は、15年前に狩俣中に勤務していた根間秀雄教諭(現コザ中勤務)が発案した。
「私は十年前のあなたです」で始まる手紙は、中学を卒業してから何をする?そして将来は?と問い掛け。自分の長所や短所、希望、悩みも書いてもらった。
今後、心掛けたい三つを記入させ、最後に「10年後に手紙を読んだ時、恥ずかしくない生活を送っていきたい」と綴らせた。
手紙を書いたのは、1998年3月に卒業した23人。卒業を控えた前年の11月19日の道徳の授業で書いた。
生徒たちは10年後の2007年11月19日に開封を約束して、それぞれの目標へと巣立って行った。
手紙や写真が入ったA4サイズの茶封筒は狩俣教諭が預かったが、沖縄本島への転勤などで約束した開封の機会を逃してしまった。
当時の教え子たちに、あのころの自分を振り返ってほしいと思った狩俣教諭は、本紙を通して呼び掛けた。
手紙を受け取った宮澤真実さん(旧姓・亀田)は、家族全員の名前を書き「ずっと平和でみんなが健康で元気でいること」と書いていた。
夢は「調理師」。実家が民宿を経営していた事から「資格を取って将来は家の手伝いをしよう」と考えた。
地元の高校を卒業して、大阪の調理師専門学校に入学。卒業後は大阪のホテルで調理師として働き料理の腕を磨いた。
しばらくして宮古に戻り、母親が一人で切り盛りしていた民宿を手伝った。
夢を実現させた宮澤さんは「当時の事はあまり覚えていないけど、自分があのころそういう風に家族の事を思っていたということがうれしい」と話した。
新里悠輔さんの夢は「宇宙飛行士」だった。現在は内装の仕事に携わっているが「2人の子供に託したい」と笑顔を見せた。
「まだ29歳だし、いろいろな事に挑戦できる。こういう気持ちにさせてもらった根間先生に感謝したい」と話した。
西里美紀さん(旧姓・柴田)は教師になりたいと思い、将来の夢を「小学校の先生」と書いた。今は中学校の教師だ。
「自分の夢をクラスで発表したことを覚えている。照れくさいけど懐かしい。子供たちの支えや道しるべになれるような教師になれれば」と語った。
手紙が当時の教え子たちに届けられた事を知った根間教諭は「いつか返せる日が来ると思っていた。子供たちとの約束を果たしてほっとした」と話した。
「夢を持つ事は子供だけでなく、大人になってからも大事。新しい目標を掲げて常に前進してほしい」とのメッセージを託した。