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社会・全般
2010年6月16日(水)17:02

言語や歴史を研究する

言語や歴史を研究する人は、一つの言葉や一つの石にも、われわれの来し方を語らしめてくれる。 
 
▼ このたび、平良恵貴氏研究の集大成である著書『琉球の地名と神名の謎を解く』(全526ページ)が出版された。出版のため準備されていた膨大な原稿を残して亡くなった平良氏の遺志をついで義弟の砂川恵栄氏(みやこ母子クリニック院長)が中心になって出版されたものである
 
▼著者は古今の歴史文献や琉球方言に見られる転訛例等を駆使、それに独創的な推論を加えて、琉球の地名や神名の多くの謎を解いていく。その内容の検討は、いずれ専門家によってなされるだろうが、著者のたゆまぬ探究心や論理的思考の方法、導きだされる結論の妙が、一般読者をも魅了するに違いない
 
▼通称「ブバカリイス」についての論考がある。著者はこの石柱は「航海の守り神」として建てられたものであると考える。その理由を次のように推論する。近くにウプ・ドゥマール(大泊)という古来の港がある→周辺の里名が船蔵(フナヴヴァ)であること等から「船」を連想する→「港」と「船」があれば「航海の守り神」がおり、それが鎮座する海岩等が必要となる。適当な自然物がなければ、人為的にこれを作ればよい。こうして、この石は建立された
 
▼従来この石については、人頭税石(賦測石)のほか「屋敷神」、「陽石」、「図根点」などの説がある
 
▼ともあれ、私たちが意味の重層なる時空に暮らしていることを感じさせる、この書の発行を喜びたい。


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