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社会・全般
特異な宇宙感覚/谷川俊太郎
「薫りも寒くほろ苦く、風にもゆらぐ孤独を支えて、誇りかにつつましく、折から彼はやってきた。若者らしく哀切に、悲哀において快活に」。三好達治の言葉に伴われて、谷川俊太郎は特異な宇宙感覚で『二十億光年の孤独』を引っ提げて登場した
▼ それから60年、多くの国民を魅了する詩を書き続けてきたということ、そのことが驚異である。今回、時代を切り開いてきた人物にその人の人生哲学や未来へのメッセージを聞く、NHKの「百年メッセージ」に谷川氏が登場した。いやが上にも期待は膨らんだが、やはり素晴らしく、多くの視聴者に大きな感動を与えたに違いない▼一番の印象は、氏の生活や人柄が詩に描かれた世界と一つだということである。その率直さ、純粋さ、深さ、大らかさ、謙虚さ、そして誠実さが人を引きつける▼断定的にではなく「ではないでしょうか」という言葉を何度も使った。いかなる権威にもよりかからず、自由に、未完の自覚を持って自己を変革していく姿勢がまぶしい。曲をつけて熱唱する小室等の歌を聴くときの荘厳な面持ちが印象に残る▼氏は語る。詩はいつも音楽に恋している(音は体ぐるみで入ってくる)。わかることは分けること(現実は一つ)。言葉ができて、宇宙に意味が生まれた。9.11後に書いた詩「拒む」では、「恐怖」と「憎しみ」に「饒舌(じょうぜつ)」が並んだ▼「詩の中の花には、本当の花とは違う美しさがある」と氏は書く。谷川俊太郎の詩の中に多彩な花を見つけたいと思う。