行雲流水
2012年3月21日(水)22:51
「知的障害者雇用」(行雲流水)
武田鉄矢のテレビ番組で、知的障害者を雇用して成功している会社が紹介されていた。従業員数74人のうち55人が知的障害者。障害者でも、自分が興味のある分野ではすぐれた集中力と持続力を発揮するという
▼川崎市にある日本理化学工業(株)は、チョーク業界のトップメーカー。粉の出ないチョークや子どもの落書き用チョークを開発したことで知られる。そして、もう一つの顔が「知的障害者のための職場づくり」モデル工場。視察・見学者が絶えないという
▼作業工程のほとんどを障害者にまかせ、一般社員は段取りに専念。文字や数字が苦手な作業員が正確な作業をするためには、さまざまな工夫を要する。材料の重さや製品の長さを測るには、計測器の目盛を単純な赤い線1本で示す。時間を計るには砂時計を用いる、などだ
▼社長は「施設で楽に暮らすことが幸せではない」と話す。人は誰でも「愛される、ほめられる、役に立つ、必要とされる」ことに生きがいを感じる。それは働くことによってしか得られないと説く
▼「働く」という字は人のために動くという意味だ、とも。粉の出ないチョークは、帆立貝の貝殻の処分に困っている漁業者を助けるために研究した結果だし、水で消せる落書き用チョークは、子どもの遊び心に寄り添うためだった
▼働く場があることは障害者にとってどんなにうれしいことか、改めて考えさせられた。同時に、障害者のために創意工夫を続けている企業があることにも敬服。ほんとの「福祉社会」像を見た思いがする。