トライ競技中 どう周知?/北朝鮮ミサイル
民泊受入農家も戸惑い/イベントや観光影響じわり
早ければ12日午前にも実施される北朝鮮の弾道ミサイル発射実験とみられる「衛星」の打ち上げ。宮古島や石垣島などの上空を通過する見通しだが、発射予告は、島の観光やイベントにも影響を与えている。
宮古島では15日に28回目となる「全日本トライアスロン宮古島大会」が開かれる。今年は約1500人が国内外から参加する。市は検討を重ねた結果、大会開催を決めたが、問題は発射時の対応だ。
トライアスロンは水泳、自転車、マラソンの3種目で競う。発射時間帯は午前7時から正午だが、実は、最初の水泳のスタート時刻も午前7時。大会実行委員会事務局長で市観光商工局長の奥原一秀さん(56)は「発射が確認されればレースは中断させる。ただ選手は海で泳ぐため、水泳中に発射された場合、陸側で防災無線が鳴っても選手に聞こえるとは限らない。防災無線以外にも船舶の汽笛で危険を知らせることも検討中だ」と話す。
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では、ミサイルの一部などを地対空誘導弾パトリオットミサイル(PAC3)で迎撃した場合、破片の落下に備えての避難はどうするのか?
5日に行われた専門委員会では委員から「発射を競技者に知らせるのが精いっぱいで避難させる時間はない」との意見が大半を占めた。
ミサイルが発射して通過するまでの時間は約10分といわれている。専門委では発射でレースが中断した場合は、各関門と制限時間を10分間延長することも確認したが、選手の記録は公式記録として認定されるのか。奥平さんは「伝達手段を含めたさまざまな問題については、9日の競技委員会で協議することになっている」と話した。
大会の開会式は13日夜に行われるが、実行委員会は開会式前に選手に対し、発射時の周知や避難方法を説明する予定だ。奥原さんは「ミサイル発射は本当に迷惑な話。どうせ飛ばすなら12日に早くやってほしい」と本音も漏らした。
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修学旅行生を受け入れる農家も心配だ。
12日に兵庫県内の高校生260人が宮古島を訪れる。2泊3日の日程で、約50戸の農家が受け入れる予定だ。
「ぐすくべグリーンツーリズムさるかの会」の松原敬子事務局長は「エージェントに問い合わせると、学校側は政府や県などから旅行中止の要請がない限り、予定通り宮古島で農家民泊をするという。外での体験メニューを見直す農家も出てくるのではないか」と戸惑い気味だ。
一方、石垣島では修学旅行のキャンセルが出た。
石垣市によると、「人工衛星」発射予告の報道後、期間内(12~16日)に修学旅行を予定していた兵庫県内の高校から「心配だから」とキャンセルが入った。他には目立った影響はないが、島の観光業関係者は「『絶対に安全』とは言い切れないところがつらい。不安を口にする人には5月の旅行を勧めている」と苦しい心境を明かした。