行雲流水
2012年5月28日(月)22:07
「フラクタル構造」(行雲流水)
「ミロのビーナス」の、つま先からおへそまでと、つま先から頭のてっぺんまでの長さの比は黄金比になっている。黄金比とは1対1・618、正確には1対(1+√)/2のことで、なぜか人に美しく感じられる。身近にある「岩波新書」の横と縦の長さの比も黄金比である
▼実は、長方形から横を一辺とする正方形を切り取った残りの長方形が元の長方形と相似のとき、横と縦の比が黄金比なのである
▼小さくなった長方形から同じように正方形を切り取るとさらに小さい長方形ができる。図形は次第に小さくなっていくがこの作業は無限に続けられる。言い換えると、最初の長方形は自分と相似な図形を無限に内包しているといえる。このように、どんなに微細な部分をとっても全体に相似している図形のことをフラクタル(自己相似)という
▼樹木の幹が幾つかの枝を出す。その枝からは小さい枝が出る。さらにその枝からはもっと小さな枝が出るが、その形は元の樹木とほぼ相似である
▼ヒトの血管をすべてつなぐとおよそ10万㌔㍍になるが大動脈から毛細血管までがフラクタル構造になっている。この構造は比較的単純な仕組みであるため少ない遺伝情報で、生命体の発現や子孫への遺伝の伝達ができ、生物にとっては都合がいい。このフラクタル構造は生物に限らず自然界のさまざまな場面の中で目にすることができる
▼私たちが感覚的に美しいと感ずるものが、自然界の構造に根ざし、深く秘められているということに驚嘆する。