博物館に行こう/仲間 伸恵
私見公論 40
ぶらりと出掛けた旅先で、もしも博物館や郷土資料館などを見つけたなら、ぜひ立ち寄ってみたくなります。その土地のことを知るには最適だし、もしかしたら見たことのない未知の感動が待っているかもしれません。
私が博物館好きになったのは、大学時代にはじめて大阪の万博公園内にある「国立民族学博物館」に行き、その凄さに衝撃を受けたのがきっかけでした。広大な万博公園内を岡本太郎の太陽の塔をよこ目に見ながら進むと、文化ゾーンの奥の方にその博物館があります。はじめて行ったときには、世界中から集められた収集品の多さと迫力に圧倒されて、迷路のような館内を半ば呆然としながらぐるぐると歩き回ったものでした。このときの強烈な印象が、私に世界中の人々の衣食住・習慣・風俗などについて興味を持ち、その中からそれぞれの美を見つけることのおもしろさを教えてくれたように思います。
その後、国内外いろいろな場所で、一日では回りきれないような大きな施設から、個人の収集品をご自宅のひと部屋に展示したような小さなところまで、さまざまな個性を持った博物館や資料館を見学し楽しんできました。
私としては、通常、あまり難しいことは考えずに、とにかくおもしろそうなので見に行く、というのが正直なところですが、もちろん博物館には社会的にとても大切な役割があります。博物館の目的について、日本の博物館法を見てみると、「それぞれの博物館に関連する博物館資料を収集・保管・展示して教育的配慮のもとに一般大衆の利用に供し、その教養・調査研究・レクリエーションなどに資するために必要な事業を行い、あわせて、これらの資料に関する調査研究をすることを目的とする」とされています。
今年度の沖縄県博物館協会の春の研修会では博物館同士の連携、博物館と地域や学校との連携、情報ネットワークづくりについてなど、それぞれの連携・協力関係をどうつくっていくかがテーマとしてとりあげられていました。博物館の持ついろいろな役割のなかでも地域や学校と協力して、地域の人々の知的好奇心を刺激したり、子供たちが学ぶ場として活用されることの重要性を改めて認識する機会になったと思います。
さて、われらが宮古島市総合博物館は平成元年の開館だということなので、もう年以上の歴史のある博物館です。開館当時、私は島を離れていたので里帰りをした際に、宮古に博物館ができたことを知ってとてもうれしく思ったものでした。生まれた場所のことを知り、自分を育んできた文化を知ることが存外自分の力になることを、私は島の外に出るようになってから、特に感じるようになりました。ここで生きてきた人々の営みの痕跡も、自然環境さえも時間のなかで日々変わっていきます。一日も早く拾い集めておきたい忘れたくない多くの記憶は、古いだけではなく、これから受け継がれ創られていく私たちの文化につながる大切なものです。宮古の先人の文化を受け継ぎ、学び、活かしていく場として、自分たちの地域に博物館があるということはとても素晴らしいことだと思います。
熱帯植物園の近く、大野山林を背に建っている総合博物館に、行ったことのない方も結構いるのでしょうか? 遠くて行きにくいという話も聞きますが、ぜひ機会を見つけて行ってみてほしいと思います。そして、私たちの大切な財産である博物館が、さらに地域に愛される博物館に育っていってほしいと願います。ちょうど今は「宮古のマングローブ環境とそこに暮らす生き物たち」という企画展を開催中です。私も見に行きましたが、写真もすごくきれいで、マングローブの花があんなにかわいいことをはじめて知りました。夏休み中の子供たちも、涼しい博物館に行ってみてはいかがでしょうか。