与那覇湾の保全と利用考える/ラムサール登録記念でシンポ
パネリスト3人が提言 「藻場の再生計画必要」
与那覇湾が7月にラムサール条約締結国会議で湿地登録の指定を受けたことを記念し4日、「与那覇湾の保全と利用を考えるシンポジウム」が下地農村環境改善センターで開かれた。仲地邦博宮古野鳥の会会長、与那覇昭雄元平良市漁協組合長、植田明浩環境省那覇自然環境事務所長の3人のパネラーが同湾の保全と再生、利活用に関して提言を行った。かつての生態系を再生するため「藻場の再生計画が必要だ」とする意見などが出された。
シンポジウムは笹川孝一法政大学教授のコーディネートで進められた。仲地さんは条約湿地登録に至るまでの経緯を「野鳥の会としては鳥がたくさん集まる場所ができればよいとの思いで、推進の立場をとっていた」と述べ、旧下地町時代には登録そのものを反対された経緯があることなどを説明した。
また、与那覇さんは、1981年に持ち上がった同湾の「淡水化計画」に久松、川満、上地、洲鎌、与那覇の漁民が立ち上がり反対運動を起こした歴史を説明。当時、漁民と一緒になって宮古野鳥の会が運動に加わったことを説明した。
与那覇さんは「漁具が発達していなかった時代から、与那覇湾は海洋生物の採取地として地域の暮らしを支えてきた場所。海草が激減し、そこに自生する小魚が捕獲できなくなった」と環境の変化を説明した上で、「かつてはジュゴンが藻場にエサを食べに来た。登録を機に藻場の再生を実現すべきだ」と提言した。
植田さんは、75年のラムサール条約発効当初、登録は湿地湿原に限定されていたが、水系、水関係に変わっていった同国際条約の経緯などを説明し、「与那覇湾は湿原干潟の本流だ」として、その価値について話した。
植田さんは「与那覇湾は最初から、同条約の基準を満たす3要素を持っていた」と述べ、①自然度が高い②絶滅可能性種がいる③同種の個体数が全体の1%生息している-に該当していることを説明した。
笹川さんは「野鳥の会と生産者がともに運動を展開したというのは全国でも極めてまれなケースだ」と述べ、地域意向を反映した保全環境計画が策定されることに期待を込めた。