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行雲流水
2012年10月1日(月)22:45

「寛容」(行雲流水)

 フランス文学者渡辺一夫教授は辻邦生や大江健三郎ら、数々の文学者を育てたことで知られる。大江は高校生のときに『フランスルネサンス断章』を読んで感銘を受け渡辺の下へ進学し学んだ。辻も渡辺を慕って進路先を仏文学科へ転じた


▼ところで、渡辺一夫には『寛容は自らを守るために不寛容に対して不寛容になるべきか』という論文がある。彼は考える。人間の歴史は、一見不寛容によって推進されているように見える。しかし、寛容は不寛容の暴走にブレーキをかける力にはなる。不寛容に報いるに不寛容をもってするは不寛容を肥大させるに過ぎない

▼渡辺は、寛容こそ有効だと言い続けた。ただひとつ心配したことは、手っ取り早く容易であり、壮烈であり、男らしく見える不寛容のほうが、忍苦を要し、卑怯にもみえ、女々しくも見える寛容よりも魅力的に見えがちなことである

▼「猛獣に襲われたとき、人間は説得の道が無いのに対し、不寛容な人に対しては、説得のチャンスは皆無ではない」とも述べている。要は状況を適切に判断、平和裏に物事を解決するということだろう

▼渡辺一夫の「寛容について」を読んで、現代社会の事例に当てはめて自分の考えを論ぜよ、これは関西学院大学の昨年の入試問題である

▼今日、各国の経済は相互依存関係にある。また、文化の交流も相互理解を深めるのに有効である。今季の日本女子オープンゴルフでは、どの国の選手のナイスプレーに対しても、ギャラリーは惜しみない拍手をおくっていた。

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