沖縄の住を考える/蒸暑地域住宅シンポジウム
専門家4氏が講演/隈東大教授 「場所と建築」で実例紹介
蒸暑地域住宅シンポジウムin宮古島(主催・独立行政法人建築研究所、NPO蒸暑地域住まいの研究会)が27日、市内のホテルで開かれた。主催者2団体の理事や国土交通省住宅局の担当者ら4氏が沖縄における住宅のあり方や課題などについて、それぞれの立場で講演を行ったほか、東京大学の隈研吾教授は特別講演として「場所と建築」をテーマに、自身がこれまでに手掛けた、「地のもの」にこだわった設計の実例を紹介。
来場者は熱心に聞き入っていた。
環境モデル都市である宮古島市で、世界的な課題である低炭素社会の実現のための住宅・建築物での省エネルギー手法と、それを地域活性化につなげるための手法について考えるシンポジウム。4人の講師による講演と、隈教授による特別講演、質疑応答などが行われた。
国土交通省住宅局住宅生産課の橋本公博課長は「建築住宅分野における環境施策の課題」をテーマに、現在、国が行っている住宅や建築物に対する省エネルギー対策強化に向けた取り組みなどを紹介した。
建築研究所の伊藤弘理事は「建築研究所における蒸暑地域研究の取り組み」として、沖縄の住宅の室内温熱環境調査の結果などを説明し「蒸暑地域での住宅研究は、ほかと違うアプローチをしなければ効果が現れにくい」との考えを示した。
蒸暑地域住まいの研究会の金城優理事は「沖縄における住宅の変遷と現代住宅」をテーマに、戦前の伝統的木造住宅、戦後に登場した、ツーバイフォーの規格住宅や現代木造、コンクリートブロック造り、鉄筋コンクリート造りの住宅の構造など、100年経過しない間に大きく変化してきたこれまでの沖縄の住宅構造を紹介した。
建築研究所の岩田司上席研究員は「蒸暑地域の住宅と建築研究所の技術」として、宮古島に建設された二つのエコハウスと、木造建築の生活体験施設「かたあきの里」の特徴や設計の工夫などを詳しく説明した。
特別講演では隈教授が、山の頂上部分に建物を埋め込む形で設計した愛媛県大島町にある展望台や、建物が北上川の土手の一部となっている宮城県石巻市の記念館など、「場所に注目し、場所を大事にする」という考えのもと、地のものを通して、土地の固有性を生かした自身の設計実績を多数紹介。「場所や環境には世界中の人が感心を持っている。そういうところをうまく生かし、時間に耐えられる設計をしていくことが求められている」との思いを語った。
会場には設計や建築の関係者や行政職員など多数が来場し、真剣な表情で話に聞き入っていた。