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行雲流水
2012年10月29日(月)23:33

「鳥は天才」(行雲流水)

 宮古にいる野鳥は留鳥が少なく、ほぼ9割は渡り鳥だという。渡り鳥は移動の際、進路は太陽や星の配置・地磁気・地形などから決めていることが研究で解明されている


▼AからBまで渡りをする鳥の卵をCに持っていって孵化させ成鳥にして、放鳥したらDに渡った。その際、ABとCDは平行で距離が等しかったという研究もある。この場合、本能として伝えられているのは物理学で言うベクトルである

▼サシバのように昼渡る鳥は体内時計に基づいた時刻感覚と太陽の位置から一定の方向を知り定位する。いわゆる「太陽コンパス」の活用である。その能力は、人間が高等数学や科学を駆使して月まで行ける程度なのだという

▼小さな鳥が本能でできることを人間は計算しなければできない。いろいろな本能が低下しているからだろう

▼鳥かごで飼育されている鳥でもある季節になると渡りの衝動で落ち着かなくなる。本能が衰えたとはいってもヒトにもその名残があるのではないか。ある医師が語るには、ある季節や天候になると身体に変調をきたす患者がいるという。以前勤めた職場に雨が近づくと耳が痛む職員がいた。みんなはその耳を「測候耳」と言ったものである

▼「人はみな旅せむ心鳥渡る」(石田波郷)。芭蕉も「片雲の風に誘われて漂泊の思いやまず」、旅に出た。ワイルド性も残っている。童謡作家の野口雨情は、コンクリートに囲まれているのが嫌で、立ち小便が大好きであった。鳥たちはヒトと友達である。また、「鳥は天才である」。

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