行雲流水
2013年2月20日(水)23:06
「寝殿造り」
平安京の貴族たちの住居の様式いわゆる「寝殿造り」は過ごしやすい生活空間ではなかったようである。外気をさえぎる現在の壁や仕切り襖に相当するのは簾やカーテン式の几帳のみ
▼天井は高く畳もない母屋の冬。底冷えする板張りの間で炭櫃や火桶の炭火に手をかざして手先をあたためわずかばかりの暖をとったと言われている都人の平均寿命は40歳になると「四十の賀」の祝いを催すほど低かったという
▼「徒然草」の作者吉田兼好は「家の造りやうは、夏をむねとすべし。冬はいかなる所にも住まる。暑きころ、わろき住まひは、たへがたきことなり」(第五十五段)と書いているが平安人も同感だったようで住まいは風通しのよい造りになっている
▼格調高い装いの家並みや四季それぞれが織りなす自然の美しいまちのたたずまいを人々は愛着をこめて〝小京都〟と称するが四方山に囲まれた盆地に広がる京都の冬はつかの間の旅人にとっても確かに寒い
▼それに勝るとも劣らず夏は夏で兼好法師ならずとも厳しく暑いと実感する。出歩くと暑さなれしているはずの南の住人でも悲鳴をあげたくなるほどにむし暑い。冬の寒さよりも夏の猛暑に対する住まい造りに知恵を働かせた京都の先人たち
▼京都ならではの個性ある家のたたずまいは今日伝統文化の粋と評価され地域景観の固有の要として内外から数多くの訪問客を招いている。先進地や先進国の外面にすり寄り模倣することをもって発展と自認する意識の低さでは地域に活力は生まれない。