不安募るキビ農家/TPP交渉参加
農業への影響386億円か/例外品目に望み託す
安倍晋三首相が15日の記者会見で、環太平洋連携協定(TPP)への交渉参加を正式に表明した。これを受けて宮古島市のサトウキビ生産農家は「大きな不安がある」と話し、先行きの見えないTPP交渉に強い懸念を示した。肉用牛を飼養する畜産農家の心配も絶えない。「守るべきものは守らなければならない」と指摘し、肉用牛や砂糖、米などの重要5品目が関税撤廃の例外として取り扱われるよう望みを託した。
宮古地区農業振興会などによると、TPP交渉参加における宮古島市と多良間村への影響額は農業全体で約386億円。中でも基幹作物のサトウキビは約340億円とけた違いの影響額となっている。
仮に関税が撤廃された場合、サトウキビ農家への交付金(1㌧当たり1万6000円)の財源確保が大きな課題として浮上する。輸入糖に掛けている調整金が交付金の財源になっているためだ。このような影響が懸念されることから、県内の関係団体は交渉参加反対を強く訴えてきた。
安倍首相の会見をラジオで聞いた上野地区の川満長英さん(68)はサトウキビを栽培している。TPP正式参加表明を受けて「大変不安であり、残念。私たちはサトウキビ一筋なのでこれからどうなるのかという心配の方が大きい」などと不安げに話した。
糖業関係者は「安心してサトウキビを生産できるという農業政策が見えないから不安になる」と憤った。
下地敏彦市長も「問題は価格保障制度が継続するかどうか。継続されないのであれば、それに代わる新しい制度を国に作ってもらわなければいけない。宮古は日本一の砂糖の生産地。それを守る政策が不可欠」という考えを示した。
肉用牛を飼育する上地良淳さん(57)は「避けて通れない道なのかと思う部分もある」としながらも「全品目が完全自由化になった場合、小規模農家はどうしようもなくなる。だから例外品目は必要であり、これを捨ててまで(交渉に)参加する必要があるのかどうかは疑問だ」と話し、例外品目の重要性を強調した。
生産農家の不安が解消されないまま交渉参加へとかじを切った日本政府。TPP交渉の過程と新たな農業政策が注目される。