平良好児賞に森田たもつ氏/短編集「蓬莱の彼方」/22日に授賞式
「緻密な構成、筆力豊か」/選考委
第14回平良好児賞(宮古毎日新聞社、同賞実行委員会共催)の選考委員会がこのほど、市内レストランで開かれ、森田たもつ氏(50)=本名・森田保、平良、歯科医師=の「蓬莱の彼方」(発行所・ボーダーインク)に決まった。授賞式は22日にホテル共和で行われる。平良好児賞候補は6作。森田さんは初の候補で受賞を決めた。受賞作は、宮古島を意識し市井の人々に光を当てた短編集。タイトルの「蓬莱の彼方」は、与那国島を中心に行われていた「闇交易」の史実を基に、主人公山本富之助の波乱に満ちた人生を描き第34回新沖縄文学賞を受賞した。
ほかに、都会での音楽活動に終止符を打ち、故郷に戻って活動を続ける男の気持ちや心の葛藤をユーモアやペーソスあふれる文体でつづり第3回おきなわ文学賞一席・県知事賞を受賞した「オールド・マーチン」、振り込め詐欺を題材に人と人とのつながりを描いた第36回琉球新報短編小説賞受賞の「メリー・クリスマス everybody」など4編が収録されている。
選考委員の仲宗根將二さんは、森田氏の作品について「舞台は宮古のようでいて都会の片隅を思わせる。筆力のなせるわざであろう」、仲地清成さんは「緻密(ちみつ)な構成と的確な表現でリアリティーを感じさせる」、友利昭子さんは「人生の哀歓と人間への信頼や愛を表現していて、読後感が爽やかである」とそれぞれ評価した。
森田氏は「次世代につないでいくという使命も託された受賞だと思う。文学を目指す若い人たちの刺激になるよう、これからも一生懸命頑張りたい」と話した。
平良好児賞 長年宮古の文学界をリードし、「宮古文学に種をまく人」と呼ばれた故平良好児氏の遺志を受け継ぐため、平良氏が亡くなった翌年の1997年に創設。以降、毎年1度、宮古にかかわる各種文芸ジャンルで、優れた文筆活動をした個人や団体を表彰している。これまでに�個人、1団体が受賞ている。昨年は該当作なしだった。宮古毎日新聞の創刊�周年を期に2005年から本社が主催を引き継いだ。