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社会・全般
「親業における能動的な聴き方の訓練とその効果」について
日本親業協会親業インストラクター 福里 盛雄
1 親業における能動的な聴き方とは
子は、親とは別の人格を持つ人間として、自分の人生を歩んでいきます。その過程でさまざまな感情、すなわち喜怒哀楽を経験しながら一人の人間として成長していきます。人はその喜怒哀楽の感情が他人に受け入れられるとき、情緒的に豊かになり、心身共に健全になり、幸せな人生の基礎を築くことが可能となります。特に子供は、その親から自分の喜怒哀楽の感情が受け入れられることが、親に対して心の扉を開いてどんなことでも隠さずに打ち明ける原動力となります。
子供が親に心から安心して話す雰囲気に包まれて育った子は、社会的にも積極性に富んだ明るい人間、自分で問題課題を解決していく力を備えた人間として成長していきます。親業における「能動的な聴き方」とは、前述したように、子が今、感じている喜怒哀楽の感情を親が受け入れ、子と共有することであると言えます。
親業における「能動的な聴き方」は、子が怒っていたり、悲しんでいたりしている感情を抱かせる問題を抱えているとき、親がその原因となっている子の問題課題を「能動的な聴き方」によって子供自身でその解決策を考え出す力をつけてあげる聴き方である。
人間の抱く喜怒哀楽の感情のうち、「喜び、楽しみ」は子供にとって別に問題とならないし、子供自身にとっても良い状況である。ところが、怒ったり、悲しんでいるときは、子供自身に何か問題があると考えます。この場合は、子が問題を所有することになり、問題の所有者は親ではなく、子供の方です。問題の所有者が問題解決策を考え出す指導権を持つことが大切です。「能動的な聴き方」がその場合はその効果を発揮します。
2 親業における「能動的な聴き方」の訓練とその効果
親業における「能動的な聴き方」は子供が問題を抱えている場合、即ち、子供が問題の所有者である場合であるから、問題の所有者がその解決策を考え出す指導的役割を果たさなければならない。親は、その手助けをするだけである。ボールは子供自身が持っているのです。子供の問題解決すべきボールを親が奪い取って問題解決策を提示してあげることは、子供の成長にとって最適ではありません。
例えば、子供が悲しそうに泣きながら学校から帰ってきた場合、「母は能動的聴き方」によって、子供の悲しそうな気持ちをくみ取って「悲しそうだけど、何か学校でいやなことでもあったの?」と言う。そうすると子供が、「親しかった花子ちゃんが転校して別の学校に移るの」と言う。そこで、母親は「あらそうなの。それは悲しいわよねぇ。あんなに親しく遊んでくれたのにねぇ」と子供の悲しい気持ちをくみ取ってあげる。ここで母親が「友達は転校することもあるのよ。また、新しい友達ができるわよ。そんなに悲しむことはないわ」と言ったとすれば、子供の悲しみは解消して明るい子に変わる可能性は出てくるのでしょうか。
子供は、母親って今の私の心の悲しみなんて分かっていない、と母親に話しても無駄だと悲しみに沈んでしまいます。親にとって大切なことは、新しい別のお友達ができることではなく、今の悲しみを共有することであります。そうすれば、子供は自分で新しいお友達をつくること等を考えます。
能動的な聴き方は、子に解決策を提示したり、親の考えていることに子が賛同して、その考えに従うように子供に命令したり、指示したり、子供の感情を批判したりすることではない。子の感情を正しくくみ取るように、親はその感受性を高める努力をしなければなりません。このように子が問題解決を自分の力で解決する能力を付けるために、大きな効果を発揮するのが、「能動的な聴き方」である。