求められる慎重な工事/保護と開発の両立を
海中公園来年4月オープンへ
来年4月のオープンを目指し、平良狩俣地区で工事が行われている宮古島海中公園(仮称)。観光の目玉として期待を寄せる観光関係者も多い。ただ、市が民間業者に委託した環境調査の結果、推計8500郡体のサンゴ類に影響が及ぶことが明らかになり、環境への負荷を軽減するため市は工法など当初計画の見直しを決定。しかし当初見込みの25%程度の影響は出ると想定している。宮古島の財産である美しい海。環境保護と観光開発という対局にあるものを両立させるためには、慎重な調査と工事が求められる。
■海中公園計画
狩俣地区に海中観察施設などを整備する事業で、総事業費約9億円。そのうち国からの補助金「農産漁村活性化プロジェクト支援交付金事業」6億円と「地域活性化・公共投資臨時交付金」3億円を充てる。市の負担額は約3000万円だが、半分は地方交付税交付金で対応できることから実質的な持ち出しは1500万円を見込んでいる。
計画では、湾になっている岩礁の一部に沿ってコンクリート製の箱形の海中観察施設(長さ20㍍、高さ4㍍)を海面から4㍍下に設置。18~20個のガラス窓を設置し、海の様子が分かるようにする。併せて磯遊び施設などの整備も予定している。
■建設場所の適正
狩俣のビーチと聞くとシュノーケリングスポットとのイメージはないが、実際に海中を見てみるとサンゴ礁が群生していて、クマノミやニジハギなど複数の魚を観察することができた。この海域を今の状態のまま見せることができれば、観光スポットとして人気を集めることは十二分に予想される。台風による強い波に施設が耐えられるのかなど耐久性を心配する声も聞かれるが、担当課の職員は「専門家がきちんと設計して建設するのだから、心配はない」と言い切る。
■環境への影響
市が民間に委託した環境調査では、工事により「海浜植生および海生生物(主にサンゴ類)の消滅が予測される」として保全対策の必要性を示した。それを受け、市は観察施設を海底に固定する際の工法を、広範囲の海底を削る「水平カット方式」から、必要な部分に限定して削る「壺掘り方式」に変更。観察施設へのアプローチは当初は岬を囲むような「海中回廊」を通って入る計画だったが、それをやめ陸上から直接入る設計に変えた。海中公園プロジェクト室では、これらの変更により当初計画と比べ影響を受ける面積は75%少なくなると試算している。
同室の仲間利夫室長は「環境に影響がないとは言えないが、防波堤工事などを考えると大きな影響はないのでは」との考えを示す。
■サンゴ移植
工法を変えても影響を受けるサンゴ礁は少なからずある。同室では再度、施設設置部分にどれほどのサンゴ礁があるのか現地調査を実施し、移植可能なものはいったん植え替え、工事終了後に戻す予定にしている。工事請負業者にサンゴ移植の実績があることから、同工事の中で移植作業も併せて実施できると同室では説明する。
ただ、どれほどの数の移植が可能なのかは、調査結果を待たなければ分からない。すべて手作業となることから、大量の移植は難しいことも予想される。理想はすべての移植だが、どの程度で「良し」とするか、専門的な判断が必要となる。
■最重要課題
今年度内の工事完了というスケジュールが決まっている同工事。補助金返還などの事態に陥らないためには、工期を守ることは大切。しかし、完成を焦る余り自然への配慮がおろそかになり、万が一にも海の環境を壊すようなことがあっては取り返しのつかないことになる。多くの観光客に来てもらうためにも、島の宝である美しい海を守り続けていくことを最重要課題として取り組むことが求められる。