大津波の歴史掘り起こす/沖縄防災環境学会
5氏が研究成果発表
沖縄防災環境学会の講演会が22日、市中央公民館で開かれた。5人の専門家がそれぞれの研究成果を発表。古文書などから「明和の大津波」の災害や被害を受けた人たちを掘り起こした。歴史的経験を共有させるとともに、大規模災害に備えた防災対策の向上を促した。
2011年3月11日に発生した、東日本大震災による大津波は、国内における史上最大規模と推定されている。
しかし、古文書によると今から約240年前の1771(明和8)年に発生した明和の大津波は「遡上高85㍍」と記され、死亡や行方不明者数を人口比でみると、東日本大震災の規模を超えると推定されている。
「多良間島民と明和津波」と題し発表した山田浩世氏(日本学術振興会特別研究員)は、明和の大津波の被害状況を記した古文書を紹介した。
それによると、明和の大津波で島民3324人の10%に当たる362人が死亡。さらには農業基盤の崩壊によって飢餓が発生し、台風の襲来も追い打ちをかけて150人以上が餓死した。
生存人口の四分の一に当たる700人以上が宮古や八重山に逃れたが、100人以上が死亡するなど大津波以降、島民がたどった苦難の歴史を説明した。
同講演会は、今年3月に行われた青山学院大での講演に続くもの。主催者では「各地における大規模津波防災への対応や東北地方における災害からの復興のための知見形成への一助になれれば」と話している。
講演者と発表テーマは次の通り。
山田浩世氏(日本学術振興会特別研究員PD)「多良間島民と1771年明和津波」▽山本正昭氏(県教育庁文化財課)「八重山の遺跡に見出された津波痕跡」▽盛本勲氏(同)「友利元島遺跡に見る明和津波痕跡」▽久貝弥嗣氏(市教育委員会)「友利元島遺跡発掘調査による新発見」▽仲座栄三(琉球大学島嶼防災研究センター)「歴史津波に対する新説」