祭祀の現状と課題でシンポ/伝承文化研究セ
谷川氏の「常世旅立ち会」開く
宮古伝承文化研究センター(佐渡山安公所長)主催のシンポジウムが23日、狩俣公民館で開かれ、民俗学を研究する有識者、狩俣、西原の祭祀を司る神女らがパネラーを務め討論会を行った。また、同日午前には、沖縄・宮古の民俗学研究に大きな足跡を残し、今年8月24日に逝去した故谷川健一氏を偲んで「常世旅立ち見送り会」が旧来の宮古の弔いの儀式に則って執り行われた。同見送り会には狩俣集落の住民、同氏とゆかりのあった研究者や教え子らが各地から多数参列した。
シンポジウムは「宮古の祭祀の現状と課題」をテーマに6人のパネラーらが討論を行った。佐渡山氏と狩俣恵一沖縄国際大教授が司会進行を務めた。
パネル討論では宮古地域の中で行われる祭祀が後継者が途絶えることで消失しつつある現状について考え、どのようにして継続を図るかなどの意見が出された。
パネラーの居駒永幸氏(明治大教授)は昭和30年代の高度経済成長期に地域にあった祭祀が次々に消えていった歴史に触れ、「今はそれを再生する時代に入ったのだと考える」と述べた。岡谷公二氏(跡見女子大名誉教授)は沖縄の御嶽と済州島の拝所が酷似していることなどを紹介した。
久貝則子さん(現役アブンマ)と渡久山安子さん(元アーグスンマ)が神女になった経緯を説明し伝統祭祀を守るためには霊性を持った後継者を絶やさないことの重要性を訴えた。
島村恭則氏(関西学院大教授)は「祭祀の再生には神を感じる人抜きには考えられないことがよく分かった。集落内部から上手く再生していくことが大切だ」と述べた。また、須藤義人氏(沖縄大講師)は「研究する立場としてもカンカカリャやツカサの霊性は無視できない」と述べ、古宇利島で区長が祭祀を行うという例を挙げ、「その土地にあった継続を模索する必要もある」と提言した。
パネル討論を総括して狩俣氏は「年間54もある祭祀を絞り込んで継続するものを決め、極端に霊性重視に走らず、コミュニティー全員が積極的に支援し参加できる祭祀と直会(なおらい)の持ち方をも検討する必要もある」と述べた。