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行雲流水
2013年12月10日(火)9:00

「三木清」(行雲流水)

 パスカルは書いた。「人間は一茎の葦に過ぎない。自然のなかで最も弱いものである。だが、考える葦である」。確かに人間は広大な宇宙を、考えることで、あるいは意識で満たしている


▼三木清は京都学派に属し、このパスカルや親鸞の思想について思索を深めた哲学者である。彼は戦前、近衛文麿元首相のブレーンであった。だが、逃走中の社会運動家高倉テルを援助したことから治安維持法の適用をうけ投獄され、戦後に獄死する

▼その死で、終戦後1カ月以上を経てもなお治安維持法が存在し、政治犯が獄中にあったことを知り、GHQ(連合国最高司令官総司令部)は強いショックを受け、最高司令官マッカーサーは政治犯の即時釈放、思想警察(特高警察)の廃止等の覚書を発して実行させる。それを契機に政府は治安維持法の廃止、教育や経済の民主化等の政策を次々と実施していった

▼歴史は過去と現在の対話であると言われる。対話を十分に行い、未来に禍根を残すことのないようにしなければならない

▼ちなみに、三木は兵庫県竜野市から名誉市民の称号を与えられている。また、彼の業績を顕彰し、後世に伝えていくために「三木清明日の文化賞」が制定され、毎年小・中・高校生の作文コンクールが実施されている

▼彼は次のような言葉を残している。「孤独は山になく、街にある」。「幸福は人格である」。「取り締まり政治は人間性の明るい面を見ないで、暗い面を見る」。「政治の過剰は政治の充実ではなく、政治の科学性の没却、哲学の貧困を示す」。(空)

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