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行雲流水
2013年12月24日(火)8:55

「第9交響曲」(行雲流水)

 師走。世界中でベートーベンの第9交響曲「合唱」が演奏されている。この曲は、フランス革命の理念である「自由・平等・博愛」に強く影響されたドイツの詩人シラーの詩「歓喜に寄す」に曲をつけたものである

▼当時、ベートーベンは聴覚を失う失意のなかにあった。また、フランス革命後の混乱やナポレオンの皇帝即位に失望していた。しかし彼はその苦悩を乗り越え、人類賛歌ともいえる壮大な曲を書きあげた

▼第4楽章で、バリトン独唱で歌われる叙唱「おお、友よ、このような調べではなく、もっと快い、喜びに満ちた歌を歌おうではないか」の部分はベートーベン自身の作詞によるものである。続いて、コーラスは歌う。「なんじの神秘な力は、切り離されたものを再び結びつけ、なんじの優しい翼のとどまるところ、人々はみな兄弟となる」

▼この曲は、東西ドイツが再統一されたとき祝典曲として演奏され、長野オリンピックの開会式では、世界五大陸を結んで演奏された。南アフリカのアパルトヘイト(人種隔離)が廃止されたとき、黒人と白人が一緒にコーラスでこの曲を歌っている

▼抑圧される黒人の解放と共に、加害者である白人の側も、とらわれた心を解放することが必要だと考え、対話でその融和を図り、アパルトヘイト廃止のために貢献したマンデラの生涯が世界中で賞賛されているこの年末に「第9」が演奏されることは特に感慨深い

▼この曲の主題は「苦悩を突き抜けて歓喜に至る」である。「第9」よ、響け、とどろけ。

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