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私見公論
2014年4月4日(金)8:55

「木を見て森を見ず」からの発想の転換②/長嶺 巖

みんなの共生社会条例が生かされる島づくり
私見公論88

 平成26年3月6日の宮古毎日新聞に障害者の社会参画を考える地域づくりフォーラムが開催され「障害のある人もない人も共に暮らしやすい社会づくり条例」が4月1日施行されるとの記事を見て感動した。記事を読んで最初に感じたことは、障害者、健常者の壁を取り除く心のバリアフリー、地域づくりのバリアフリーの考えを共有することであると感じた。

 以前取り組んだ些細な事例を紹介してみたい。2年前の1月18日池間島のT氏の家でビールを飲みながら談笑し、2月14日は池間大橋開通20周年記念日だよな盛大に祝おうと話したところ、車椅子生活をしているT氏から実は私は池間大橋を自家用車で通っているが、車椅子で通ったことがない。橋からきれいな海を見てみたい。池間大橋の橋詰広場にあるトイレは車椅子で入れないので、狩俣世渡崎にある障害者用トイレを使っているとの話がでた。

 若い頃に福祉事務所に勤務し、ボランティア活動にも参加していた自分として大変申し訳ない気持ちになった。翌日、現場の状況を確認するため、T氏と池間大橋橋詰広場に車を止めて車椅子で狩俣まで散策した。池間大橋橋詰広場のトイレでは車椅子は入れなかった。また、T氏の言うとおり車道と歩道の境界には段差があり人手を借りなければ渡れなかった。狩俣世渡崎にあるトイレは狭いながらも車椅子が入れて用足しもできた。私はデジカメで現場の写真をとって橋の管理者である沖縄県土木事務所に要請しようと思っていた矢先、偶然にも世渡崎橋詰広場に土木事務所道路維持管理班のパトロール車が入ってきた。バリアフリー化の話をしたところ、一緒に現場を確認することになった。

 その1カ月後、池間川側、狩俣側2カ所の幅1㍍高さ20㌢の歩車道境界ブロックが取り除かれ車椅子が自由に通れるとT氏から連絡を受けて早速、友達4名で確認しにいった。T氏の車椅子を先頭に池間側から大橋を通って狩俣までバリアフリーになった池間大橋1450㍍を全員で渡った。大橋開通20年目にしてT氏の「池間大橋渡り初め」が実現したことを全員で喜びT家で乾杯した。迅速な対応で段差を解消していただいた宮古土木所職員の皆さんのご尽力に感謝の言葉を伝えたいと思っていたがついに2年が過ぎてしまった。紙面をお借りして改めて御礼申し上げます。

 さて、平成9年に「沖縄県福祉のまちづくり条例が制定され、多くの方が利用する公共施設等の「物のバリアフリー」、互いを理解し共に支え合う「心のバリアフリー」を推進する条例が施行された。この条例が施行される前の公共施設には障害者用トイレ設備の義務付けがなかったため池間大橋橋詰広場(平成4年完成)の公共用トイレには障害者用トイレが設備されなかったことが考えられる。

 「交通バリアフリー法」の制定や、「ハートビル法」の改正など福祉のまちづくりを取り巻く環境も大きく変化したことを背景に平成年月には沖縄県福祉のまちづくり条例が改正され、整備基準の適合義務付け対象が拡大し、幅広い利用者を想定した整備基準の充実など一層のバリアフリー化が進められている。しかし、平成9年以前の施設は対象外で年間万人の観光客が来島する池間島に障害者用のトイレがないのが現状である。

 沖縄県福祉のまちづくり条例前文には、すべての人が個人として尊重され、さまざまな交流やふれあいを通して、生きがいをもって自由に行動し社会参加できる地域社会を実現することは私たちの願いであり使命であると謳っている。私は健常者、障害者という言葉自体が大嫌いである。「みんなの共生社会条例が生かされる島づくり」を大きな森に例えて考えてみると、森には大木もあれば、小さい木も生えている。少子・高齢化社会の中で、市民一人、一人が幸せな地域づくりを実現するためには小さい木を含め全体に光をあてることによって立派な森ができることを共通の理念として「住んで良かった・来てよかった地域」にしていこうではありませんか。(ながみね いわお・池間漁業協同組合代表理事組合長)

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