行雲流水
2014年6月12日(木)8:55
「知識と経験」(行雲流水)
以前、台風15号が強い勢力を保ったまま沖縄、九州、中国地方を縦断したことがあった。沖縄の停電は1日だけだったが、九州・中国地方では全面復旧に1カ月かかった
▼その差異は何に起因するか、本土の電力各社は〝先進地〟沖縄へ視察調査団を派遣。電柱のガイシ(漏電を防ぐための陶磁製器具)に違いがあることが分かった。台風常襲地帯の沖縄では、本土のガイシよりひだの多い多段式ガイシを採用し、塩害による漏電を防いでいた。科学的な根拠があったわけではない。単に経験上の勘によるものだった
▼理論値を持たない沖縄側はあわてた。急きょ、琉大の先生に頼んで後付けの理論を仕入れて対応。知識と経験とが融合した技術が明らかになり、議論の土俵が共有された。その後で、はじめて投入資金の過不足がテーマになった
▼先月、カザフスタンで開催されたアジア開発銀行総会で、麻生財務大臣は「日本は資金だけでなく、知識・技術・経験を提供して協力したい」と述べた
▼一括交付金をめぐる県内各市町村の対応はどうか。不足しているのは実は「知識・技術・経験」ではないのか、と思えるフシがある。従来からの惰性で、思考停止に陥っていないかどうか
▼宮古人気質の一つとして「進取の気性」を挙げる人は多い。進取の気性は、発想力・構想力の源だ。将来展望をひらくための基本だ。農業やエネルギーなど多くの分野で、従来の経験則だけに頼らず、新しい知識や技術を取り入れて最適解を模索する意欲があるはずだ、と思いたいのだが。