行雲流水
2014年7月15日(火)8:55
「里山」(行雲流水)
NHKの番組『里山』は語る「里山、それは人と生きものとが共に暮らす自然、いのち響きあう美しい世界」。まさに真実の美しさを語る言葉である
▼里山は人間が暮らす集落と隣接、人間がつくりだした田畑との緩衝地帯にあって、多様な動植物が生育しており、生物多様性を保全する上で重要な役割を果たしている
▼かつては、まきや家畜の飼料を採取した場所であり、屋根ふき用のカヤを刈り取る場所であった。生活様式が激変した現在でも、里山は水を涵養(かんよう)し、空気を浄化し、ふるさとの原風景を維持している。聞こえてくる小鳥たちの鳴き声は生活空間を爽やかにする
▼里山は何百年もの間、人間に恩恵を与えてきた。一方で、人間は共同で里山を守ることを通して、生態系と、美しい景観を維持し、同時に、地域社会の絆を深めてきた
▼竹富島では、石垣の防風林の側には蝶の食草が植えられていて蝶のいのちを支えている。自然と人間の共存である。一方で、宮古のヤーバリの下地長生園周辺の林の数百本の松はほぼ全滅、無残な姿をさらしている。原因はマツクイムシによるものではなく、他に原因があるという。いずれにしても、この惨状がくい止められなかったことは残念である
▼里山や地域を守る住民の意識や自助努力の重要さは言うまでもないが、今、国の内外ですすむ格差の拡大による地方の衰退が危惧されている。どこに住んでいても、人が人間らしく暮らせる条件整備こそが、豊かな自然や多彩な文化の薫る各地の「ふるさと」の存立を保障する。