クイチャー衣装を苧麻で
宮古の伝統素材用い/無形民俗文化製作事業始まる
ブー績み普及拡大にも/市教育委
市教育委員会(宮國博教育長)は今年度の沖縄振興特別推進交付金(一括交付金)活用事業として実施している「宮古島市neo歴史文化ロード整備事業」(7850万円)のうち、「無形民俗文化財資料製作業務委託費」(350万円)を充当し、クイチャーを踊る際に身に着ける着物を苧麻糸を用いて製作する事業を宮古織物事業協同組合(理事長・長濱政治副市長)に委託した。同事業で作る試作品は今年、友利、荷川取、砂川のクイチャー保存3団体に貸与され、各団体の意見を踏まえた上で改良を加え、次年度以降、本格的に生産事業に結びつけていきたい考えだ。
市生涯学習振興課文化財係の川満邦弘係長によると、宮古の伝統的な踊りである「クイチャー」を市の文化財として指定したまま、これまで団体育成に寄与できなかったことなどを踏まえ、宮古の伝統的織物である「宮古上布」で用いられる苧麻糸を用いて衣装製作ができないかを検討していた。
地域の伝統織りを地域で使用することによって、その両方の保護に努めながら普及促進するという狙いがある。同組合とは今月12日に委託契約を交わした。
今回製作する試作品は11月に開催される「クイチャーフェスティバル」までに完成させ、3団体にそれぞれ3着ずつを貸与する。
業務委託を受けた同組合の上原則子専務はクイチャー衣装として製作する反物は、横糸を手績みの苧麻糸を用い、縦糸には紡績綿糸を用いるという。上布糸として用いることができない太い糸や目の粗い糸でも有効活用することができることから、ブー績みの生産意欲にもつなげることができると説明した。
上原専務は「生産された苧麻糸をすべて買い取ることができるシステムをつくることになる。ブー績みの底辺を広げることによって、雇用効果も上がり、組合と各保持団体との連携策にもつながっていく」と話した。
川満係長は「クイチャーフェスティバルも回を重ねるごとに、島内外に広く周知されるようになった。宮古上布や苧麻糸の持つ良さを広くアピールするよい機会にもなる」と説明した。
生産された着物は、市教育委が無償で各種団体に貸与するという形になるが、将来的には島外の団体に対しても貸与事業を展開し、クイチャーと苧麻糸の伝統保持と普及促進に努めていく考えだ。