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行雲流水
2014年9月2日(火)8:55

「論語に学ぶ」(行雲流水)

 『論語』に、「民はこれに由(よ)らしむべし、これを知らしむべからず」とある。この言葉は、民は従うだけでいい、知らせる必要はないと権力者に都合のいいように解釈されてもきた

▼事実、歴史的には多くの権力がそのような姿勢で政治を行ってきた。例えば、ナチス・ドイツの『指導原理』には、指導者(実質的にはヒトラー)に民族のすべてが従うべきだというもので、法律よりも彼の意志が重要だとされた

▼「大きなうそほど民衆は疑わない」、「うそでも繰り返し言えば真実となる」とうそぶくナチスの情報操作によって民衆は偏った価値観を刷り込められていった

▼ところで、「民はこれに由らしむべし」の「由(よ)る」は「頼(よ)る」の意味で、為政者は民衆に頼られるようでなくてはならないというのが孔子の真意だとされる。ちなみに、孔子は政治のあり方について「民は信なくば立たず」と言い、最も大切なことは為政者が民から信頼されることだと語っている

▼「これを知らしむべからず」は「知らせるな」ではなく、「理解させることが難しい」と解釈するのが正しい。したがって、丁寧に説明することが必要だということである。要するに、信頼して頼られる政治、よくは知らなくても、まかし切れる政治が理想とされている

▼そのためには、政治は民衆のためにあるという原則を意識することが重要である。孔子の時代と社会は大きく変わったが、この原則に変わりはない。「そもそも国政は国民の厳粛な信託によるものである」(日本国憲法・前文)。

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