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行雲流水
2014年12月23日(火)8:55

「第9交響曲」(行雲流水)

 今年も年末を迎えて、ベートーベン作曲の『交響曲第9番』が世界各地で演奏されている。この曲の第4楽章では、フランス革命の理念である「自由・平等・博愛」に強く影響を受けたドイツの詩人シラーの詩「歓喜に寄す」が歌われる


▼「汝の神秘な力は、切り離されたものを再び結びつけ、汝の優しい翼のとどまるところ、人々はみな兄弟となる」

▼この高邁(こうまい)なメッセージ性の故に、東西ドイツが再統一されたとき、祝典曲としてこの曲が演奏された。また、南アフリカのアパルトヘイト(人種隔離)が廃止されたとき、黒人と白人が一緒になってこの曲を歌っている。戦乱を繰り返してきたヨーロッパ各国が共存共栄を希求、結成されたEUを象徴するものとして、この曲が採用された

▼今年は、この曲に人々はどんな思いを託すのだろうか

▼世界に改めて衝撃を与え、ベストセラーになっているトマ・ピケティの『21世紀の資本』は富の格差を鋭く分析、富が公平に分配されないことによって、社会や経済が不安定になっていることを指摘する。例えばアメリカの上位1%の所得者の所得割合は20%に達する。その結果、下位の貧困層が生活苦に追いやられている。程度の差はあっても世界に共通する現象である

▼さて、第9交響曲では、熱狂や奔放、甘美や瞑想(めいそう)を第4楽章では否定、主旋律が神々しく奏でられる。続いてバリトン歌手が立ち上がり高らかに歌う。「おお、友よ、このような調べではなく、もっと快い、喜びに満ちた歌を歌おうではないか」

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