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政治・行政 社会・全般
2015年3月29日(日)9:00

法令順守か、慣習尊重か/市議会3月定例会総括

アーサ採取に質疑集中

 市議会3月定例会一般質問で、議員からの質問が多かったのは海藻の一種「ヒトエグサ」(宮古方言・アーサ)の採取だった。登壇した24人中6人が取り上げ、漁業権を持たない一般市民が採取した場合の市の見解を求めた。子宮頸がん予防ワクチンの副反応問題では、早期の実態調査の必要性を促したほか、4月から始まる子ども・子育て支援新制度では保護者の不安払しょくを訴えた。一般質問の答弁などから、主に市民生活に直接関わる項目をまとめた。

 ■アーサの採取

 漁業権を持たないお年寄り2人がアーサを採取したとして、宮古島海上保安署から「警告書」を受けた。
 アーサは漁業権対象種に指定されており、一般市民の採取は「漁業者の利益を侵害する」として禁止されている。
 しかし、「季節の風物詩」として長年にわたり慣習として採取してきたお年寄りたちには「なぜ今ごろになって…」と戸惑いが広がった。
 2月19日の本紙報道後、巷では法令順守か、文化や慣習を尊重すべきかでさまざま議論が噴出した。

 ■海はみんなのもの

 市農林水産部の村吉順栄部長は18日の一般質問で「一般市民がアーサを採取するには漁協と話し合い、了解を得る必要がある」と答弁。漁協を擁護しているかのような答弁に、質問した下地明氏は「これでは浜下りもできなくなる。海はみんなのものだ」と強調した。
 市は旧暦の3月3日「サニツ」(今年は4月21日)を前に、3漁協(宮古島、伊良部、池間)が漁業権に対しての統一見解を発表する予定であることから、慎重な考えを見せていた。
 しかし、23日の一般質問で下地敏彦市長は、山里雅彦氏と下地勇徳氏の質問に「明らかに漁業権の侵害であると考えている」「本当に商売としてやりたい人は、漁協組合の組合員になるべき」と漁業法の順守を強調。これまでの答弁より一歩踏み込んだ発言を行った。
 ただ「浜下りや浜遊びの伝統行事ならば、漁業者も目くじらを立てるものではない」とも述べ、慣習として採取し自家消費することについては理解を示した。

 ■節度ある行動が必要

 漁協組合員が市民のアーサ採取を見逃せない背景の一つに、以前に比べて資源が少なくなっていることが挙げられる。
 漁業関係者は「例えば海ブドウは海にいけば、いつも目についた。ウニもそう。それが今やほとんど見られない」と話し、資源を適切に管理する漁協の役割を指摘した。
 養殖など水産分野の成長産業として期待されていることも要因だ。
 それを裏付けるデータとして村吉部長は19日の一般質問で、嵩原弘氏に「本市のアーサ養殖の中心地は大浦湾」とし、2014年度生産量は約6㌧、生産額は約420万円だったと報告。15年度は約10㌧の増産を予定していると答弁した。
 漁協側は基本的には家で食べる程度は漁業権の侵害はないとしていることから、市民も自家消費分だけの採取で海の幸をきちんと守っていくという節度ある行動が必要となる。
 「アーサ採りはお年寄りの生き甲斐」との声もある。自家消費を目的としたお年寄りが安心してアーサを採取できるような環境づくりが求められている。

 ■子宮頸がん予防ワクチンの副反応問題

 23日の一般質問では亀濱玲子氏が、子宮頸がん予防ワクチンの副反応問題を取り上げた。
 市内では、同ワクチン接種による副反応報告例が2件あり、副反応被害者を支える会が市や市議会に各種支援を求めていた。
 下地市長は、実態調査に早急に取り組むとし、医療のための渡航費についても「医療費等について助成することを検討している」と答弁した。
 支える会によると、沖縄本島の病院でも診療困難な子供たちがいて、本土に行かざるを得ない状況もあるという。
 どこに相談していいか分からず、途方に暮れている被害者がいる可能性もある。
 市の、早期の実態把握と必要な支援の検討をするという前向きな答弁を引き出したことは成果といえる。

 ■子ども・子育て支援新制度

 4月から施行される子ども・子育て支援新制度は、「学童保育所」が小学生のみを対象にした預かり保育を実施する事で、今度小学校に入学する5歳児は原則、利用ができなくなった。
 このため、対象児がいる共働きの家庭では、「仕事を休むこともできず困っている」との声が上がっていた。
 この問題は亀濱氏と上里樹氏が指摘、一般質問では満足いく市の答弁を引き出すことはできなかったが、議会閉会後の25日、長濱政治副市長と譜久村基嗣福祉部長に各学童保育所に働き掛けてほしいと要請。市も実情を認識し、市の学童施設に小学校に入学するまでの春休み期間中の受け入れを働き掛けていくとした。
 子ども・子育て支援新制度は、質の高い保育と幼児教育の提供や、待機児童の解消などを目指す総合的な子育て支援施策。新制度であるため、保護者らの不安は大きい。新制度運用後も、さまざまな課題に直面すると思うが、安心して子育てできる環境づくりへ市は独自のアイデアを出しながら対応していくことが望まれる。


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