行雲流水
2015年3月31日(火)8:55
「21世紀を生きる」(行雲流水)
21世紀には、平和で、だれもが人間らしく豊かに暮らせる世界への進歩が期待された。ところが、世界は混沌として、争いは絶えず、個人の尊厳が軽視される傾向にある
▼若者たちは、何を理想に、どう生きていけばいいのか、確かな未来を描きかねている。そうしたなかで、『竜馬が行く』や『坂の上の雲』、『空海の風景』等の著書を持つ国民的作家である司馬遼太郎の書いた『21世紀に生きる君たちへ』は示唆に富む
▼氏は、歴史から学んで、人間の生き方の基本について書いている。現代は自然へのおそれが薄らいだ時代である。自然へのすなおな態度を広げてほしい。また、ますます発達する科学・技術に飲みこまれることなく、それを支配してほしい
▼「君たちは、自己を確立しなければならない。-自分に厳しく、他人に優しい自己を。そして、すなおでかしこい自己を」。「その都度、そういう感情をもつことで、自己を訓練する」ことによって
▼「この感情が根づけば、他民族へのいたわりの気持ちが湧きでて、人類が仲良く暮らせる時代になる」。ユネスコ憲章の「戦争は人の心の中で生まれるものだから、人の心の中に平和のとりでを築かなければならない」、という言葉を想起する。無論、きな臭い「悪魔のささやき」がこの世の中には充満していることも事実である
▼この本は小学生のために、易しいことばで書かれているが、真実の基本はいつも簡単明瞭である。厳しい時代であるが、司馬遼太郎は21世紀を担う若者たちに、未来への期待を託している。